不育症
不育症
妊娠をしても二回以上の流産や死産を繰り返して元気な赤ちゃんを授かることができない場合を不育症と呼びます。(子宮外妊娠や絨毛性疾患は含みません)
習慣(あるいは反復)流産とほぼ同じ意味ですが、不育症はより広い意味で用いられます。
流産の原因で最も多い原因は胎児の染色体異常で、流産のうち50~80%はこれによるものです。ほとんどの流産は偶発的なものですが、これを繰り返す場合には母体側あるいは父親側あるいは両親に原因があることが多いです。
一般的に流産を3回以上繰り返す場合を習慣流産といい、検査をする場合が多いですが、2回流産を繰り返した場合(反復流産)に不育症と診断され、体系的な検査をすると半数くらいの患者様に異常がみつかります。
不育症の原因はさまざまなものがありますが、病態と治療法という観点からは、「胎児の染色体(つまり、受精卵の遺伝子)に異常がある場合」と「受精卵を受け入れる母体の方に異常がある場合」の2つに大きく分けることができます。不育症として不育症専門の医師が治療にあたる場合、後者を更に分類すると次のように分けられます。
子宮内の環境の異常は大きく分けて3つあります。
内分泌代謝異常としては甲状腺ホルモンやプロラクチンなどの異常、血液凝固異常には抗リン脂質抗体症候群によるものや凝固因子の不足(第Ⅻ因子欠乏、プロテインS欠乏、プロテインC欠乏)そして免疫の異常(Th1/Th2やNK細胞活性の異常など)も調べる必要があります。
もちろん、母体側(あるいは父親側)の染色体異常も存在します。
当院では不育症に悩むご夫婦に対して原因の究明・適切な診断・治療を行っています。
問診・診察・一般検査
結果の評価・診断・治療方針決定
不育症の原因は多岐にわたっており、「子宮形態検査」「内分泌検査」「抗リン脂質抗体検査」「血液凝固因子検査」などについての系統的なスクリーニング検査が必要です。
9,000円~10,000円
15,000円
※一部検査によって、保険が同時算定できない項目については自費の検査になる場合がございます。
15,000円~40,000円
妊婦健診(初診):13,000円
妊婦健診(再診):11,000円
30,520円
2,100円
子宮内の環境(微量な細菌)を調べる検査です。
子宮内の細菌(細菌叢):子宮内フローラが乱れていた場合は、適切な抗生剤とサプリメントを服用することで正常な子宮内環境に近づけることができます。
乱れていた子宮内環境を正常にすることにより、いい受精卵が着床しない状態(着床不全)を是正することが出来ます。
当院では、これまでタイミング法や人工授精を行っても、妊娠に至らなかった不妊症や流産を繰り返す不育症の患者様に検査を推奨しております。
1回目:44,000円 2回目:38,000円
子宮内フローラを正常化するサプリメントも当院で取り扱っております。
ラクトフェリン(90粒入り):8,100円
不育症の原因不明の女性のうち約20%が血栓症などの原因になるβ2GPIネオセルフ抗体が陽性で、不育症の原因やリスク因子であるとされています。
当院では、その抗体の有無を調べる検査です。
35,000円
当院では5月より免疫異常による不育症に対するイントラリピッド療法を導入しました。
イントラリピッド療法は不育症の原因のひとつである免疫異常に対する治療法です。イントラリピッドは、不育症・着床不全不妊症・流産既往不妊症で免疫異常の患者様を対象とした治療法で、精製大豆油と精製卵黄を主成分とする脂肪乳剤の点滴製剤です。
詳しく説明すると、免疫異常は免疫を担当するNK細胞の機能異常により、NK細胞が妊娠の成立・維持に重要な役割を果たしていることが近年明らかとなり、NK細胞異常を有する不育症、着床不全に対する治療法としてイントラリピッド療法も行われるようになってきました。
末梢血NK細胞活性高値例(≧40%)や、NK細胞分布の異常例では、イントラリピッド使用により末梢血NK細胞は有意に低下します。使用方法は点滴で、3-4時間くらいかかります。不育症では妊娠成立後速やかに、着床不全では胚移植時あるいはその直前にNK細胞活性を測定し高値であることを確認した後に使用します。またその後はNK細胞活性を1~2週毎に測定しながら2~4週毎にNK細胞活性が正常値になるまで、あるいは妊娠22週まで使用します。
イントラリピッド療法の有効性についての学術論文は、まだ、世界的に数少ないですが当院では症例を限定して治療を行って結果を出しています。イントラリピッド療法についての臨床研究にもご協力いただきたく宜しくお願いします。
※興味のある方は、HP→ブログ→「免疫」と検索して当院の関連するブログも覗いてみてください。
臨床研究成果は、院長挨拶の学会発表、あるいは、臨床研究に関するオプトアウトからご覧いただけます。
GS(胎嚢)確認前 25,000円
GS(胎嚢)確認後 30,000円
難治性不妊症・着床障害に対する新たな治療戦略です。
近年難治性の不妊症・着床障害に対して注目されてきた再生医療の一つにPRP(多血小板血漿)療法というものがあります。血小板の中には成長因子が多く含まれており、細胞の成長を促す物質や免疫に関わる物質が含まれています。
PRP療法とは、患者様ご自身から抽出した血小板を含む液体を子宮内に注入する治療法のことで、子宮内膜を厚くして、着床しやすくする効果が指摘されています。
PFC-FDは、「Platelet-Derived Factor Concentrate Freeze Dry」の略であり、PRPから抽出した血小板由来成長因子濃縮液を凍結乾燥保存したものとなります。患者様自身から採血した血液を処理して細胞成分を除去し、血小板由来のこれらの有益な因子のみを抽出して凍結保存したものがPFC-FDとなります。
PFC-FD療法はPRP療法と比較して、厚生労働省の認可が不要である、凍結保存することができる、といったメリットがあり、PRP療法と同等の効果が期待されている最新の治療法となります。
なお効果に関しては、まだ十分に検証されたわけではなく、個人差もあります。
当院では、上記ご理解のうえ、PFC-FD療法を行っています。ご希望の方は是非お問い合わせください。
不育症の原因として血液凝固異常があります。この異常があると胎盤内に血栓ができ、血流が滞ってしまいます。「低用量アスピリン治療」は、過剰な血小板機能を抑制することによって、血栓を防ぐ治療です。バイアスピリンを、妊娠前の高温期から妊娠16~35週くらいまで服用します。
抗リン脂質抗体症候群(APS)の治療に用いられます。アスピリンは比較的副作用が少ないことから、可能であればアスピリン・ヘパリン併用療法が望ましいと考えられています。
その他、免疫の異常を是正するためには、先にあげたイントラリピッド療法やステロイド(プレドニン)、またステロイド抵抗性のものにはプログラフ(タクロリムス)、柴苓湯などの免疫を抑える薬を内服する治療を行います。(詳細はクリニックへお問い合わせください。)
当院は、不育症の診断と治療に関しては、東京都で有数の診療機関です(※検索サイトや医療機関情報誌による)。
開院して7年目になり、以下のような研究実績が得られました。
これからも少しずつ実績を積み上げていきたいものです。
※最新の臨床成績および研究業績は臨床研究一覧ご覧ください。
不育症カウンセリング外来:月曜日・木曜日:12:00-13:00、19:00-21:00(院長)
お問い合わせメールから多くのご相談を受けておりますが、メール相談では十分対応できないことが増えています。主にこのご予約枠では他院での過去の検査・治療も含めて専門的な相談を行います。
★当院は関東信越厚生局より先進医療施設(先進医療:子宮内細菌叢検査)の施設認定を受けています。
当院は先進医療施設(先進医療:子宮内細菌叢検査)の施設認定を受けています。子宮内細菌叢検査は子宮内に存在する細菌のバランスや量を調べることにより、慢性子宮内膜炎の有無やリスク、炎症の原因となる細菌の有無を明らかにする検査です。
ご興味のある方は「先進医療」「子宮内細菌叢」あるいは「子宮内フローラ」についてのブログをご覧ください。ブログには便利な検索機能がついています。
※子宮内フローラ検査(子宮内細菌叢検査)についての成績は、国際学会においても発表しています。
Relationship between Uterine Microbiota and NK Cell Activity and Complement Consumption in Infertile Patients with Implantation Failure. The 2nd Asia Congress for Reproductive Immunology September 6-8 2024 Republic of Korea
Hirotaka Matsumi MATSUMI Ladies Clinic
当院院長が東京都「難病指定医」に認定されました。
「難病」は医療費助成の対象です。
産婦人科関連の「難病」としては「原発性抗リン脂質抗体症候群」や「全身性エリテマトーデス」に代表される免疫系疾患および循環器系疾患や骨・関節系疾患などがあげられます。
免疫系疾患、特に「原発性抗リン脂質抗体症候群」は「不育症(習慣流産)」と関連があります。
詳しくは厚生労働省の補助事業である難病医学研究財団が運営する「難病情報センター」のHPをご覧ください。
院長資格:日本産科婦人科遺伝診療学会生殖領域遺伝カウンセリング研修会(反復流産(PGT-A)における遺伝カウンセリング)修了