産科・出生前診断・妊婦健診のカテゴリーのブログを書くのは久しぶりです。
開業前には、初心に帰って胎児超音波スクリーニングを体系的に学びなおしたく、鉄門ヨット部同級生の三木明徳准教授にお願いして、埼玉県の北里メディカルセンターまで研修に通ったりもしたものでした。
北里メディカルセンター、生理機能検査室の検査部の方には大変お世話になりました(ブログ;2018年9月28日:北里メディカルセンター(2)参照)。
勿論、産婦人科専門医の資格を得るには、胎児の超音波検査についての知識は必須ですし、超音波医学は好きな領域のひとつで、これまでにいくつか英語論文なども仕上げたものです。
英語論文の中から、腹壁破裂や左室低形成症候群についてはブログ(腹壁破裂:2018年10月7日、左室低形成症候群:2018年10月16日)でも取り上げていますので、興味のある方は覗いてみてください。
開業して2年目からは、港区ではクリニックが提供する医療水準に対する信頼が必要と考え、日本超音波学会指導医・専門医の香川秀之先生に胎児精密超音波スクリーニングをお願いするようになりました。
関東労災病院副院長の香川先生がクリニックのお手伝いをしてくださっているおかげで、わたしは専門の不妊治療や不育症の治療に注力することができるようになり、ありがたいことです。
先日、香川先生もブログ(2021年5月9日)に書いてくださいましたが、嚢胞性ヒグローマ(cystic hygroma)と思われる症例が2例続きましたので、今回、ブログで取り上げてみます。
2例とも他院で妊婦健診されていた方で、1例目については香川先生がブログ(妊娠初期に見られる胎児の首の後ろのむくみ:ドクターブログ(10))でも解説してくださっています。
もう1例の方は他院でダウン症の疑いと診断され、セカンドオピニオン目的に当院を受診されました。
嚢胞性ヒグローマ(cystic hygroma)は、通常、赤ちゃんの頭部や首の後ろに現れる異常な嚢胞状構造を呈する病気です。
この疾患(嚢胞)はリンパ管系の閉塞が原因で引き起こされ、ほとんどの場合、妊娠9週目から16週目の間に嚢胞は形成されます。
概ね頻度は2%くらいでリンパ液や静脈血の流れが悪いと、胎児水腫に進行することもあります。
染色体異常やそれに伴う他の臓器の構造異常の合併頻度が高く、残念ながら予後不良なことが多い病気です。
一方、妊娠後期や出生後の期間に発症する嚢胞性ヒグローマは染色体異常は伴わないことが多いです。
染色体異常や胎児水腫を伴わない症例では生存することもあり、治療としては外科的な治療のほかにブレオマイシンという薬(硬化剤)を投与することがあります。
嚢胞性ヒグローマ(cystic hygroma)は大きくなると、出生後に物理的に呼吸や嚥下に影響を与える可能性があります。
そのため、出生前に嚢胞性ヒグローマと診断された場合は、新生児集中治療室(NICU)などの設備が整った大学病院や周産期センターで出産する必要があります。
特に、嚢胞が大きい場合は小児外科医と連携して、出生直後に気道閉塞を防ぐ目的で緊急手術を要することもあり、帝王切開による分娩が望ましいです。
当院の患者さまは、東大病院と山王病院へそれぞれ紹介となりました。