今日は先月末に開催された港区医師会学術講演会の参加報告です。
これまで港区医師会三田地区学術講演会のお話は何度かしてきましたが、医師会全体の学術講演会について解説するのは初めてです。
発表してくださったのは聖路加国際病院副院長・女性診療部部長の百枝幹雄先生で、テーマは「月経痛の最新治療」についてでした。
百枝幹雄先生は母校の先輩のとても優しい先生で、若かりし頃には丁寧に生殖医療についてご指導賜ったものです。
今回は月経がなぜ起きるかという生理学的かつ哲学的な意味から講演が始まりました。
そして、月経困難症の治療薬の作用メカニズムから最新の投与法などについてもわかりやすく話をしてくださいました。
そもそも月経っていうのは霊長類の一部にしかみられない生理現象で、さらに猿の中でもリスザルなどの樹上生活するザルにはみられません。
地上生活を行うゴリラやチンパンジーなどのザルやヒトになると月経が認められるようになります。
ヒポクラテスなどの哲学者によると、月経デドックス説といって、身体の中の不要な物質(老廃物)を体外に排出するために、月経が存在すると古来は考えらえれてもいまして、実際に古典的医学には瀉血療法(=しゃけつりょうほう:血を体外に排出する治療法)もありました。
月経困難症は、月経に伴う痛みが日常生活に支障をきたす病気ですが、この病気は子宮内膜症に伴うことが多いです。
月経困難症は、日本にはざっと800万人の患者が存在し、この病気のために病欠及び疾病勤務をしている方の1年間の経済的な労働損失は5000億円にも達します。
子宮内膜症の治療には低用量ピルが用いられます。
低用量ピルにはエストロゲン及びプロゲスチンが含まれますが、プロゲスチンには酵素(COX:シクロオキシゲナーゼ)の働きを阻害する作用があります。
このため、低用量ピルを内服すると痛みを起こす物質(=プロスタグランジン)の産生が減ります。
その他に、別の酵素(アロマターゼ)の働きを阻害することによってエストロゲンの産生が減ることや神経を成長する作用のあるタンパク質(NGF:Nerve Growth Factor:神経成長因子)の分泌が減少することにより、神経線維(Aδ繊維やC繊維)を伝達する痛み刺激が減弱することも子宮内膜症に特有の月経痛が緩和するメカニズムのひとつです。
低用量ピルの服用方法には、毎月内服する「マンスリー:monthly」やある程度自由に調節する「フレキシブル:flexible」に加えて、連続投与する「コンティニュアス:contimuous」方法があります。
連続投与法は海外ではすでに主流になっている投与法で、月経困難症の痛みを取るには最も有効です。
昨日は、院内で低用量ピルの勉強会も開催しまして、スタッフも大変熱心にメモを取っていました。
勉強会の様子はクリニックのインスタグラムにもアップしています。
スタッフインスタグラムは「staffmatsumi」を検索してください。