学会参加報告が随分遅くなりました。
6月の最終週の金曜日から日曜日まで開催されました、第21回日本抗加齢医学会総会の参加報告です。
今回は、「男性医学」についてのシンポジウムの中から面白そうな演題についてわかりやすく解説してみたいと思います。
はじめは「女性に対するテストステロンの作用」という演題についてです。
演者は、徳島大学大学院医歯薬学研究部産科婦人科学分野の岩佐武先生でした。
女性ホルモンのエストロゲンは生殖機能の維持に関与していますが、男性ホルモンのアンドロゲンとともに栄養や代謝(=生物が外界から取り入れた物質を分解する化学反応のこと)の調節などの生理機能にも関わります。
女性においては、エストロゲンは適正な(栄養)代謝機能を維持する作用がありますが、一方、アンドロゲンは摂食量や脂肪量を増加させ、糖尿病など(の内分泌代謝疾患)の発症リスクを高める作用があります。
また、男性においては、アンドロゲンは代謝機能に良好な作用を及ぼし(糖尿病などの内分泌代謝疾患の発症リスクを低くする作用があり)ます。
このようにアンドロゲンの作用には性差があり(=男性と女性で差があり)、この原因についてはこれまでは身体の中のアンドロゲンの量(=濃度)の違いで説明されてきました。
今回の研究でエストロゲンとアンドロゲンの相互作用という観点から動物実験を行い、アンドロゲンがエストロゲンの存在下では摂食量・体重・脂肪量を増加させるのに対して、エストロゲンが存在しないと(=エストロゲン非存下では)このような作用がないことがわかりました。
また、アンドロゲンはエストロゲン存在下では高脂肪食に対する嗜好性を増加させ(その結果、摂食量や脂肪量を増加させ、糖尿病などの発症リスクを高める作用があ)るのに対して、エストロゲン非存在下ではこのような作用がないことがわかりました。
これらの結果から、女性においてはアンドロゲンはエストロゲンの作用を阻害することで代謝疾患(である糖尿病など)の発症リスクを高める可能性が示唆されました。
また、動物実験によって、アンドロゲンの栄養や代謝に対する作用が胎仔期の低栄養環境によって増強されることを明らかになりました。
この結果は低栄養環境下ではアンドロゲンは個体の生存には有利に働くが、飽食の現代においては糖尿病などの発症リスクをより高める要因になると予想されるとのことでした。
さて、今回の学会参加で、無事抗加齢医学会専門医の資格を更新することが出来ました。
残念ながら、コロナ禍にて大好きな京都には行けずWEBでの学会参加となりました。
また機会があれば、日本の古都、ゆっくり訪れたいものです。