順番が逆になりましたが、10月23日(土)と10月24日(日)は、第17回日本周産期メンタルヘルス学会学術集会のWEB開催の日程でしたので先取りで参加しました。
実際に開催されたのは10月31日と11月1日でしたが、コロナ禍で学会のWEB開催が浸透し、有難い限りです。
学会長は日本赤十字社医療センター産婦人科部長の笠井靖代先生でした。
笠井先生には東大産婦人科で研修していた頃より大変お世話になっており、内覧会にも素敵なお花を贈ってていただきました。
当院は日本赤十字社医療センターともセミオープンシステムを構築しておりまして、港区の広尾や渋谷区在住の方においては大変お世話になっております。
演題はどれも興味深い講演でしたが、その中の特別講演「オキシトシンと社会的行動 オキシトシンの両方向性作用」をわかりやすくご紹介させていただきたいと思います。
演者は自治医科大学医学部生理学講座神経脳生理学部門の尾仲達史教授で、座長は日本赤十字社医療センター副院長の宮内彰人先生です。
オキシトシンは主に脳の視床下部という部分で産生され、脳下垂体後葉から分泌される9個のアミノ酸からなるペプチドホルモンです。
バゾプレッシンと構造が似ていますが、9個のうち2個のアミノ酸が異なります。
オキシトシン(oxitocin)の語源は、ギリシャ語のoxus(促進)とtokos(分娩)という単語から構成されていまして、産婦人科医には、子宮収縮を促進する作用のある馴染み深いホルモンと言えます。
長く続いたコロナ禍で、社会的な孤立や精神的なうつ状態やうつ病の方が増えました。
オキシトシンは子宮収縮以外にも、オキシトシン受容体を介して、親子やカップルの愛着的な行動を増やす作用があります。
例えば、一夫一婦制を示すハタネズミの研究からオキシトシンはつがい形成(pair bonding)に重要な役割を持つことがわかっています。
逆に、オキシトシン受容体がなく、オキシトシンの作用が働かないネズミは、授乳ができないだけでなく仔ネズミを巣に集めるといった母性行動も障害されます。
このように、オキシトシンは母性の愛着行動にも寄与していますが、このオキシトシンの反応性は接触刺激により増強することがわかっています。
また、オキシトシンは母子間の絆だけでなく、仲間と協力して社会を構成することにも重要な働きを持ちます。
このオキシトシンの作用は、さまざまストレス刺激で活性化されます。
オキシトシンは、さまざまなストレス反応を抑制的に働くということがわかってきており、「愛情ホルモン」というより「ストレス適応化ホルモン」と捉えることもできます。