2月7日月曜日は愛育病院主催の「東京都周産期医療ネットワークグループ区中央部ブロック連携会議」でした。
1月中旬から毎週月曜日も東京大学産婦人科からの医師派遣が再開しまして、藤井達也先生が診療のお手伝いに来てくれています。
藤井先生は穏やかでとても優秀な先生で、当院と東京大学産婦人科との学会発表(SNPマイクロアレイ検査による出生前診断に関する演題です)の共同演者でもあります。
※Successful prenatal genetic diagnosis for a pregnant woman with a history of repetitive pregnancies with chromosome 7-involving abnormalities.
Hirotaka Matsumi, Takeshi Nagamatsu, Tatsuya Fujii, Mikio Momoeda, Tomoyuki Fujii.
the 27th Asia Oceania Federation of Obstetrics and Gynecology、Bali(Indonesia)、2022年 5月(in submission)
当日の夕方は、院長指定の患者さまを除き、藤井先生に外来診療をほぼお任せしましたので、余裕をもって会議に参加することが出来ました。
司会はいつもの通り、愛育病院の山下隆博副院長先生でした。
まず、初めに「区中央部ブロックにおける現状」ということで、東大病院と愛育病院、そして2021年度より新たに総合周産期母子医療センターに指定された東京慈恵会医科大学附属病院の3つの施設から2021年度の母体搬送やNICUの実績報告がありました。
続きまして、東京都における周産期医療体制についての報告ののち、子宮腺筋症合併妊婦の管理や愛育病院における COVID-19感染妊婦の現況、特にオミクロン株についての講演がありました。
何度か解説していまして重複になりますが、この中から当院の診療と関係のある「子宮腺筋症合併妊婦の管理」についてポイントを解説したいと思います。
演者は東京大学産婦人科の入山高行講師でした。
子宮腺筋症とは子宮内膜に類似した組織が子宮の平滑筋組織の中に出来る良性疾患で、主な症状は、①子宮の肥大、②月経困難症、③月経過多ですが、子宮筋層の機能の異常のため④不妊症につながる可能性があります。
子宮腺筋症合併妊娠においては、①妊娠12週以上の後期流産、②妊娠高血圧症候群、③胎児発育不全、④胎盤位置異常や⑤早産などの合併症の発生頻度が上昇します。
子宮腺筋症を病巣の局在でFocal typeとDiffuse typeに分類した場合、Diffuse type、すなわち、子宮全体に子宮腺筋症の病巣がある方が、Focal type、すなわち、ある特定の位置に病巣があるよりも、これらの産科合併症が起きる頻度は上昇します。
低用量アスピリンは不育症の治療でよく用いられていますが、このような合併症を防ぐために子宮腺筋症合併妊娠においては予防的に低用量のアスピリンを投与することがあります。
また、子宮腺筋症核出術(=子宮腺筋症病巣除去術)による子宮腺筋症の病巣の切除も妊娠や分娩に一定の効果があるとのことでした。
なお、質問に対して、産科合併症の頻度については子宮腺筋症病巣と胎盤の位置関係による有意な差はないとの回答でした。
昨年度は、当院からも東大病院や愛育病院に母体搬送をお願いしましたが、これらの病院と医療連携を構築していただいていることは大変ありがたいことだと感謝しつつ、スタッフとともに周産期医療の診療に従事していきたいものです。