第4回日本不育症学会(3):「不妊症とネオセルフ抗体」|まつみレディースクリニック|港区・田町・浜松町の産科・婦人科・不妊|女医在籍

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第4回日本不育症学会(3):「不妊症とネオセルフ抗体」

第4回日本不育症学会(3):「不妊症とネオセルフ抗体」|まつみレディースクリニック|港区・田町・浜松町の産科・婦人科・不妊|女医在籍

6月第1週の土曜日は名古屋にて第4回日本不育症学会が開催されました。

シリーズで紹介しています学会の参加報告の続きです。

 

今回の日本不育症学会では、15題の一般演題うち3つの演題がネオセルフ抗体に関するものでした。

クリニックの本棚に学会のプログラムが掲載してある学会誌も並べていますので、宜しければご覧ください。

今回はその中から不妊症とネオセルフ抗体についての演題についてポイント解説したいと思います。

 

「不妊症におけるβ2GPI/HLA-DR(ネオセルフ抗体)の関与」という演題名で、山梨大学産婦人科の小野洋輔先生が発表されていました。

この発表は北海道の手稲渓仁会病院の山田秀人先生の研究グループとの共同研究です。

以下、発表の要旨とポイント解説です。

 

【方法】

不妊症の方で抗β2GPI/HLA-DR抗体を測定した224人を対象として解析した。

224人の中で体外受精を行ったのは148人でした。

 

【結果】

224人中40人(17.9%)がネオセルフ抗体陽性で、子宮内膜症、子宮筋腫、内膜ポリープ、甲状腺疾患、多嚢胞性卵巣などの関連疾患について、多変量解析を行なった結果、子宮内膜症では抗体陽性率が有意に高く、子宮内膜症は抗β2GPI/HLA-DR抗体陽性のリスク因子であった。

また、体外受精を行った患者において詳しく調べてみると、胚移植後3回以上着床不成功の反復着床不全(RIF)では抗体陽性率が有意に高く、RIFは抗体陽性のリスク因子であった。

 

【結論】

ネオセルフ抗体が不妊症、子宮内膜症や反復着床不全の病態に関与することが明らかとなった。

抗体陽性の不妊症や反復着床不全では、妊娠前からの抗凝固療法が有効である可能性があり、エビデンスの蓄積が新たなプレコンセプションケアの確立につながると考えられた。

 

以上が発表の要旨ですが、わかりやすくまとめますと、

1.私たちの研究結果とおおむね同じですが、不妊症の患者のおよそ2割の方にネオセルフ抗体が陽性で

2.生殖年齢で発症する子宮内膜症、子宮筋腫、内膜ポリープ、甲状腺疾患、多嚢胞性卵巣などの婦人科疾患の中では、子宮内膜症の方にはネオセルフ抗体陽性の方が有意に高く、

3.体外受精胚移植を繰り返しても着床しないため妊娠に至らない、反復着床不全の方はネオセルフ抗体が陽性のことが多い。

ということになります。

 

若かりし頃一緒に病棟勤務をした吉野修准教授が山梨大学にご栄転されまして、これから当院とも医療連携が構築できればうれしいものです。