学会参加報告が随分遅くなりました。
6月に開催されました第22回日本抗加齢医学会総会の参加報告です。
今回は当院が専門的に診療している着床障害の原因となる子宮内フローラ(子宮内細菌叢)とも関連のある腸内細菌の話と加齢の妊娠への影響の話を、前編と後編の2回に分けてご紹介します。
「腸内細菌」という単語の書籍を目にする機会が増えました。
前編は「腸内細菌」についてのシンポジウムの紹介です。
このシンポジウムの中の4つの講演から「腸内細菌による疾患制御・予測の可能性」と「腸管-肝臓-脳ネットワークによる腸管恒常性維持機構の解明」の内容をポイント解説します。
喫煙は腸内の代謝産物(=食べ物が分解され産生される物質)に影響を与えます。
タンパク質を構成する成分のアミノ酸である「トリプトファン」などがこの代謝産物に含まれます。
トリプトファンはアミノ酸の中でも必須アミノ酸(タンパク質を構成するアミノ酸のうち、体内で十分な量を合成できず栄養分として摂取しなければならないアミノ酸)というカテゴリーに分類されます。
例えば、炎症性疾患である潰瘍性大腸炎の患者で検討してみると、タバコを吸っている患者は、禁煙により腸内のこれらの代謝産物が変化し、その結果、腸内細菌叢(=細菌の種類)も変わります。
腸内細菌叢の変化は、身体の免疫環境を変えることにより潰瘍性大腸炎の病勢(=病気の程度)に影響を与えます。
病は気からといいますが、精神的なストレスで胃が痛くなることがあります。
逆に、腹痛によって不安を感じたりすることもあり、脳と腸には密接な相関関係があります。
この相互関係を「脳腸相関」といいます。
腸管内に存在する白血球の仲間であるリンパ球という免疫を担当する細胞が、末梢と中枢とを結ぶ主要な神経である「迷走神経」を通して脳に情報を伝えています。
なお、この脳から腸への調節には肝臓が関わっています。
細菌叢についての知見は次世代シークエンサーという遺伝子を解析する医療技術の進歩により急送に進んでいます。
先日、子宮内フローラ検査が先進医療に認定されました。
先進医療は厚労省が認定した保険診療と併用できる自費診療になります。
先進医療については、過去ブログ(2021年5月13日)に詳しい説明がありますのでそちらも参照にして下さい。
当院でも、子宮内フローラ検査を先進医療として実施できるように、現在準備を進めています。