第40回日本受精着床学会(1):「精子」|まつみレディースクリニック|港区・田町・浜松町の産科・婦人科・不妊|女医在籍

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第40回日本受精着床学会(1):「精子」

第40回日本受精着床学会(1):「精子」|まつみレディースクリニック|港区・田町・浜松町の産科・婦人科・不妊|女医在籍

7月28日の木曜日はクリニックを休診にして、第40回日本受精着床学会に出席してきました。

当院は生殖補助医療(体外受精胚移植)は行っていませんが、着床にフォーカスを当てて不妊治療をしているクリニックです。

参加報告を5回のシリーズで紹介したいと思います。

 

第1回は精子の話です。

教育講演「精液所見のあれこれーWHOの新基準ー」と「精子提供について考える」というシンポジウムの内容ををポイント解説したいと思います。

 

WHOの精液検査の基準値は、2010年度版から2021年度版に新たに改定されました。

新基準値は、精液量が1.4ml[1.5ml]、精子濃度が1,600万個/ml[1,500万個/ml]、精子運動率が42%以上[40%以上]に変わりました([]は2010年度の基準値)。

また、2021年度の評価項目としては精子DNA断片化検査や精液中酸化ストレス測定の項目が新たに加わりました。

 

精子DNA断片化(Sperm DNA fragmentation)は、精子のDNA損傷を表します。

加齢や生活習慣の悪化が原因となり、精子が酸化ストレスなどのダメージを受けることで、精子のDNAは損傷します。

精子のDNA損傷は受精率や妊娠率の低下や、流産率の上昇の原因となります。

 

精液中の酸化ストレスを引き起こす活性酸素が精子のDNA損傷の原因になります。

この精子のDNA損傷の程度は、それを引き起こす原因の精液中の酸化ストレスの指標となる精液中のORP(Oxidation-reduction potential:酸化還元電位)を測定することによって推測できます。

 

「精子提供について考える」というシンポジウムの座長は独協医科大学の岡田弘教授と東京医科大学の久慈直昭教授でした。

精子提供についての有名な単語にAIDがありますが、これは正確に記述するとAID(AID:artificial donor insemination)は以前に用いられていた医学用語で、現在では、DI(DI:donor insemination)と呼ばれます。

「insemination」という英単語が「授精」という日本語に相当し、AIDやDIは「非配偶者間人工授精」といって、ご主人以外の男性ドナーの精液を使用した人工授精になります。

DIは(非閉塞性の)無精子症の方や未婚あるいは性別違和の夫婦が挙児に至る唯一の手段ですが、精子提供における告知と子が出自を知る権利について、今後議論を深めていく必要があると思います。

 

一般的には人工授精は6回程度を目安としてステップアップをすることが多いです。

当院は、生殖補助医療を行っていない人工授精までの一般不妊治療だけを扱っていますが、着床障害に注力した丁寧な診療を行っており、このような患者さまに対しては他院よりも早く結果を出している施設だと思います。

今年度より、不妊症の治療成績に人工授精で妊娠に至った回数での統計も集計しましたので、そちらもご覧ください。

なお、先日、5㎝くらいの大きさの子宮筋腫合併不妊の方が8回目の人工授精で妊娠に至っておりますので、6回以上行っても結果が出ないということはありません。