第37回日本生殖免疫学会で講演をするため、高知に来ています。
日本生殖免疫学会は、文字通り、生殖領域における免疫機構についての基礎医学と臨床研究に関する学会です。
安芸では阪神タイガースの秋季キャンプが行われていました。
背番号80番岡田監督、頑張ってました。
シリーズで紹介しています第2回は、私たちのグループが発表する演題の抄録です。
演題名:流産既往女性における抗リン脂質抗体と凝固線溶系との相関に関する検討ー従来の抗リン脂質抗体とネオセルフ抗体との比較―
〇松見泰宇1、藤井達也2、永松健3
まつみレディースクリニック三田1、成育医療研究センター2、国際医療福祉大学成田病院産婦人科3
【目的】
抗リン脂質抗体症候群(APS)の臨床診断基準に血栓症と産科合併症がある。APSの臨床症状の共通背景に病原性自己抗体による凝固線溶系の変化があるとされている。
近年、HLAクラスII分子と複合体(β2GPI/ HLA–DR)を形成したβ2-糖タンパク質I(β2GPI)に対する自己抗体(ネオセルフ抗体)が、APSに関連する新規の自己抗体となることが報告された。
本研究では流産既往のある女性について従来の抗リン脂質抗体およびネオセルフ抗体と凝固・線溶マーカーとの関係について検討した。
【方法】
流産既往のある女性58例を対象として従来の診断基準に該当する抗リン脂質抗体(抗カルジオリピンIgG/IgM抗体、抗β2GPI抗体、ループスアンチコアグラント)およびネオセルフ抗体の血清抗体価を測定した。
バイオマーカーとしてTAT、AT3とD-ダイマーおよびAPTTにより凝固・線溶状態を評価した。
さらに、その後の妊娠転帰との関係について検討した。
【結果】
従来の抗リン脂質抗体陽性は10例、ネオセルフ抗体陽性は6例であり、その中で1例で両方が陽性であった。
28例でTAT濃度の上昇が認められ、全例でAPTTは正常範囲であった。
TAT上昇の頻度は、従来の抗リン脂質抗体陽性群で80%(8/10例)、ネオセルフ抗体陽性群では83%(5/6例)であり、陰性群の37%(16/43)よりも高かった。
その後、TATの上昇が確認されていた16例を含めて23例で臨床妊娠が確認された。
3例が初期流産となったがそのうち2例はTATの上昇があり、そのうち1例はネオセルフ抗体陽性であった。
【結論】
従来からの抗リン脂質抗体陽性群とネオセルフ抗体陽性群のいずれもTAT上昇を示す頻度が高かった。
それらの自己抗体の病原性の背景には凝固・線溶系の変化があり流産と関連する可能性がある。
会場では、朝早くから最前列に東京大学産婦人科大須賀穣主任教授がいらっしゃってくださり、励みになりました。
なお、演題の内容は、学会終了後に院内に掲示しますので、興味のある方はクリニックにいらしてみてください。
近く、東京大学産婦人科とも共同で演題を出すために、クリニックでは資料作成の準備を鋭意進めています。
次回の演題では、甲賀かをり准教授がアカデミックな領域のサポートをしてくださいます。