5月になり、すっかり春から初夏になりました。
これまで、第1回アジア生殖免疫学会については、1回目のイントロダクションから始まり、不妊症および不育症におけるネオセルフ抗体と補体についての我々の臨床研究を4回シリーズで解説してきました。
さて、第1回アジア生殖免疫学会(6)以降では、他の演題発表の要旨もポイント解説してみたいと思います。
以前にお伝えした通り、Repeated Implantation Failure(反復着床不全)のセッションの発表は4題でした。
座長は、奈良県立医科大学産婦人科の木村文則教授。
以下、プログラムから
Oral 4:Repeated Implantation Failure
Chair:Fuminori Kimura
Department of Obstetrics and Gynecology, Nara Medical University
O4-1 Evaluation of the tacrolimus treatment using euploid blastocyst for
women with repeated implantation failures showing elevated type-1
helper T (Th1)/Th2 cell ratios
Koji Nakagawa
Sugiyama Clinic Shinjuku
O4-2 The distribution of serum Th1/2 ratio and NK cell activity in patients
with recurrent implantation failure
Yihsien Enatsu
Hanabusa Women’s Clinic
★O4-3 Evidence for Correlation between Novel Autoantibody against
Phospholipid Named Neoself Antibody (β2GPI/HLA-DR) and Complement
Consumption in Infertile Patients
Hirotaka Matsumi
Matsumi Ladies Clinic Mita
O4-4 Does intrauterine infusion of PRP affect the window of implantation?
Kunihiro Enatsu
Hanabusa Women’s Clinic Nishnomiya
この中からいくつかの演題をご紹介させていただきたいと思います。
まずは、2つ目の演題の
O4-2 The distribution of serum Th1/2 ratio and NK cell activity in patients
with recurrent implantation failure
についてのワンポイント解説です。
抄録集のabstract(概要)を日本語に訳します。
クリニックに来院した患者さんの中から、2回以上体外受精胚移植し、少なくとも2回以上反復して着床不全のため結果の出なかった母集団を対象として同種免疫について検討を加えた。
検査項目としては、①Th1/Th2比と②NK細胞活性の2項目を測定し、Th1/Th2比は2874人、NK細胞活性は1144人のデーターを解析し、Th1/Th2比は10.3以上をNK細胞活性は40%以上を治療対象とした。
この母集団における平均値は、Th1/Th2比が10.3、NK細胞活性が22.9%であった。
①Th1/Th2比が異常であった2874人中の40.7%と②NK細胞活性が高値を示した1144人中の12.8%が、タクロリムスやイントラリピッドによる治療を受けた。
解析した結果、反復着床不全であった母集団において、①NK細胞活性は年齢により上昇していたが、②Th1/Th2比については特異的な特徴はなかった。
以上が抄録集にあるこの発表のabstract(概要)の和訳です。
現在、当院でも不育症・反復着床不全・不妊症における同種免疫異常の関与についての臨床統計およびその解析を進めています。
母集団の数は圧倒的に少ないですが、何かうまい切り口を考えて、治療に繋がる臨床研究の成果を導き出したいものです。
つきましては、同種免疫が異常値(Th1/Th2比が10.3以上、NK細胞活性が40%以上)である患者さまは、臨床研究の対象となりまして、各種検査についての優遇措置があります。
詳しくは、お問い合わせフォームまたは電話にてお問い合わせください。