先日、知人から「精子バンク」のことについて尋ねられました。
精子バンクというと、わが国では、商業主義のかなりネガティブなイメージがありますが、デンマークなどの国々では、ポジティブな捉えられ方もされているようです。
欧米では同性婚など、生物学的に配偶子(生物の生殖細胞のうち接合して新しい個体を作るもの : gamete =ヒトの場合、精子または卵子のこと)の片方を欠いたカップルの婚姻が認められているところもあります。
そういったカップルが子供を望んだ場合には、子供が欲しければ、精子提供(レズビアンの場合)という選択肢しかないのが主な理由のひとつです。
生殖補助医療の技術の進歩により、無精子症という精子を形成することができない患者さんが、円形精子細胞という精子になる前の細胞を用いた顕微授精を行なって赤ちゃんを授かったという報告なども散見されております。
それでも精子を提供に頼らざるを得ないカップルが存在するのは事実です。
ちなみに、提供精子による人工授精 (かつては、AID;artificial insemination of donorと呼ばれていましたが、DI : donor inseminationが正しい用語です。) は、海外では少なくとも1940年代ごろから行われていたようです。
DIを行う場合には、感染症の有無を調べるために、凍結保存した精子を用います。
この技術は、そもそもは男性のがん患者が抗がん剤による化学療法を受ける前に、精子をストックしておいたことから始まりました。
精子提供、(もちろん、卵子提供も同じです。)には「匿名性」や「出自を知る権利」といった倫理的に難しい内容が伴いますが、これに関しては、また、機会があれば書いてみたいと思います。