日本産婦人科学会東京地方部会会誌(1)の続きです。
2021年より当院で世界に先駆けて行っていたネオセルフ抗体検査についての日本語論文を紹介しています。
はじめて研究成果を発表したのは福岡で開催された日本産科婦人科学会のインターナショナル セッションでした。
2021年1月に東京大学産婦人科主任教授に就任された大須賀穣教授に年始のご挨拶として、英文の抄録を持参しました。
大須賀先生は鉄門ヨット部の頃から大変お世話になっている大先輩です。
面談が多いのか大変お疲れのようでした。
英語の抄録を直していただこうかとラストオーサーに名前をいれていた抄録を読まれると、
「先生の今回の研究については何も手伝っていないから、僕の名前は抜いてください。」
「先生の学年はみんな頑張ってますね。」
「困ったときは大学まで来なくていいので、教授室まで電話してください。」
と言われたのを覚えています。
福岡での学会については、過去ブログも参照してください。
ネオセルフ抗体と補体についての英語論文の方は7月7日にacceptされ、in pressになった状態から4回目の原稿チェックを終えましてそろそろpublishされます。
日本語論文は別刷りがクリニックにございます。
ご希望の方には差し上げますので、受付でその旨お伝えください。
前置きが長くなりましたが、前回に続きまして【緒言】からのご紹介になります。
ネオセルフ抗体検査の有効性について
〇松見泰宇1、藤井達也1、百枝幹雄2
まつみレディースクリニック三田1、母子愛育会総合母子保健センター愛育病院2
【緒言】
2014年に荒瀬らにより、HLAクラスⅡ分子と複合体(ネオセルフ)を形成したミスフォールディング蛋白質が、自己免疫疾患に関連する新規の自己抗体(ネオセルフ抗体)となることが報告された。
血栓症と産科合併症を引き起こす抗リン脂質抗体症候群(APS)でもβ2GPIネオセルフ抗体が確認され、単独陽性群も多数みられることが報告されている。
他方、APSの既存の抗リン脂質抗体検査は健常女性でも陽性となることがあり、一定数の偽陽性者が認められる。
APSの凝固異常として、APTTの延長などが認められる。
これまで、ネオセルフ抗体陽性患者において同様の傾向を認められるかどうかは不明であった。
我々はこれまでにβ2GPIネオセルフ抗体が従来の抗リン脂質抗体で陰性の不育症患者においても凝固亢進状態を検出することを発表してきた。
本研究では、流産、化学流産既往のある女性を中心として、血清中ネオセルフ抗体の抗体価と凝固・線溶状態の指標となる血漿中TAT濃度の相関を検討した。
抗リン脂質抗体症候群(APS)の臨床診断基準に血栓症と産科合併症がある。
APSの臨床症状の共通背景に病原性自己抗体による凝固線溶系の変化があるとされている。
近年、HLAクラスⅡ分子(β2GPI/HLA–DR)と複合体を形成したβ2-糖タンパク質I(β2GPI)に対する自己抗体(ネオセルフ抗体)が、APSに関連する新規の自己抗体となることが報告された。
不育症患者においてもこれまでにβ2GPIネオセルフ抗体が従来の抗リン脂質抗体と比べてより高感度に全身の凝固亢進状態を検出することが可能である。
本研究では流産既往のある女性について従来の抗リン脂質抗体およびネオセルフ抗体と凝固・線溶マーカーとの関係について検討した。
また、流産後に不育症スクリーニング検査を行い、β2GPIネオセルフ抗体のみ陽性を認め、LDA投与による治療を行い、女児を得た症例についても報告する。
長くなりますので、【成績】からは日本産婦人科学会東京地方部会会誌(3)で報告します。
もうすぐ、9月。
暦の上では秋ですが、暑い日々が続きます。
神奈川の海とか久しぶりに見に行けたらいいなあ。