シリーズで紹介している日本臨床免疫学会の参加報告の第2回です。
今回の日本臨床免疫学会では、当院も不育症・着床不全不妊症と免疫についての先端的な研究発表を行いましたが、産婦人科以外の他科の演題は大変勉強になりました。
第51回日本臨床免疫学会 (2) では、他科の演題の中から皮膚科領域の発表を紹介します。
東京大学皮膚科の柴田彩先生が発表された「皮膚疾患の再発および慢性化・難治化における細胞の記憶」という演題はアトピー性皮膚炎の話でした。
以下、ポイント解説です。
皮膚は身体の外側を覆っていますが、外部からの刺激による炎症が起こっても、回復力を備えているため、早期に治療を開始した場合には治療がよく効き治ります。
一方、治療の開始が遅れて皮膚における炎症が長期にわたり慢性化した場合には、治療の開始が遅れたことにより難治性になります。
アトピー性皮膚炎などの慢性炎症性疾患においては、起きた炎症が治癒しまた再発することによって、炎症と治癒のプロセスが繰り返されるあいだに、回復力が低下して、細胞内で病的な炎症の記憶が蓄積されることがあります。
このような細胞における病的な記憶は炎症が収まり治癒することを妨げ、その結果皮膚炎の慢性化・難治化の原因にもなります。
「炎症を起こしやすい」細胞の仕組みを理解し、炎症が起きる経路や因子の働きを阻害する生物学的製剤やJAK阻害剤などの開発により、治療成績と患者の生活の質は向上しつつあります。
今回の発表では、皮膚科領域に限らず、整形外科などでも、このJAK阻害剤という新しい薬の治療効果についての発表が数多くみられました。
この薬は産婦人科領域ではまだ使われていませんので、また、機会があれば解説したいと思います。