シリーズで紹介している日本臨床免疫学会の参加報告の最終回です。
第51回日本臨床免疫学会では当院も着床不全不妊症および不育症における自己免疫についての先端的な発表を行いました。
発表内容の一部はポスターにして院内に掲示してあります。
宜しければ、クリニックに足を運んでください。
最終回は、今回の学会で大きく取り上げられていたJAK阻害剤とTNFα阻害薬(=抗TNFα薬)について解説したいと思います。
関節リウマチ、アトピー性皮膚炎などの炎症性疾患はストレス、食生活、肥満などの環境要因によっても発症することが知られています。
この炎症反応は、白血球の中のマクロファージという免疫細胞やリンパ球の一種であるヘルパーT細胞(このなかのTh2細胞)からTNFα、IL-4、IL-6、IL-13、IL-22といった名称のサイトカインや化学伝達物質が放出されることで生じます。
このような炎症を誘発する化学物質をケモカインということもあります。
炎症性サイトカインであるTNFαやIL-6、IL-2などが炎症を引き起こす際、それらのサイトカインが各々の受容体という細胞表面にあるタンパク質に結合することで、刺激が細胞内の核に伝わります。
詳しく説明すると、これら各受容体にはJAKと呼ばれるタンパク質が付随していて、このJAKを介して刺激(=シグナル)が核へと届けられます。
ちなみに、JAKの最後の文字のKはキナーゼという酵素を意味する単語の頭文字に由来します。
細胞内の核内に刺激(=シグナル)が到達すると、炎症反応が引き起こされ、関節リウマチや乾癬、アトピー性皮膚炎などが進行します。
JAK阻害薬はJAKを阻害することで、TNFαやIL-6による刺激(=シグナル)が核に伝わるのを遮断して、炎症を抑えるといった作用機序です。
こうして炎症が抑えられる結果、これらの疾患の炎症症状や進行の抑制に繋がると考えられています。
TNFαとは、腫瘍壊死因子(=Tumor Necrosis Factor)の頭文字に由来する単語で、これはブログにもよく出てくるサイトカインの1種で、体内の炎症の場で中心的に働きます。
関節リウマチとは免疫の異常により炎症反応が起き、関節の腫れなどがあらわれ、腫れが続くと骨が壊され変形する病気です。
TNFα阻害薬は炎症を引き起こす主要な体内物質TNFαの作用を抑え、関節のリウマチの症状を改善し、骨などの損傷を防ぐ効果が期待できます。
JAK阻害剤とTNFα阻害薬は、ともに産婦人科領域ではまだ使用されてはいない薬剤になります。