シンポジウム2の「妊孕性改善と生児獲得を目指したpreconseption care(プレコンセプションケア) 」で発表された「不育症とビタミンD」の講演の紹介の続きです。
講演後半の部分の、ホモシステインの蓄積に関わる酵素の異常の説明です。
ホモシステイン (homocysteine) は、アミノ酸のひとつであるメチオニンの代謝における中間生成物です。
メチオニンを代謝する(=分解する)酵素の中にはメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素というものがあります。
メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)という酵素の作用が弱いと(メチオニンをうまく代謝できないので)ホモシステイン(HCY)が蓄積します(=ホモシステイン血症になる)。
詳しく書くと、MTHFR遺伝子の異常は、MTHFR 遺伝子のDNAの暗号の文字の677 番目のシトシン(C)がチミン(T)に変異したもので、遺伝子の文字の変化(その結果続く、メッセンジャーRNAの変化)は、産生される(=その遺伝子がコードする)アミノ酸を変化させます。
このため、メチレンテトラヒドロ還元酵素(MTHFR)は(アミノ酸からできているので)熱不安定性の酵素に変化し、酵素活性が50%以下に低下し、血中ホモシステイン濃度が有意に高値になります(=ホモシステインが蓄積します)。
MTHFR遺伝子の異常がない不育症患者のグループは、異常がある患者のグループと比較して(酵素の活性が高いので)血中ホモシステイン濃度は低く、
血中のホモシステイン濃度が高い不育症の患者は、ナチュラルキラー細胞の活性(=エヌケー活性)が高いという結果でした。
(ナチュラルキラー細胞についてはブログ参照)
実際、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子異常による若い患者さんの脳梗塞の症例報告の論文もありまして、この遺伝子の異常(=酵素活性の異常)によるホモシステインの蓄積が(脳での)血栓形成の(=脳梗塞の)原因であると考察されていました。
「MTHFR遺伝子異常」、かなり、難しかったですね。
お疲れさまでした。