シリーズでお伝えしている第39回日本生殖免疫学会の演題のポイント解説です。
前回は一般演題の中から、妊婦における細菌性腟症のお話をしました。
臨床の演題の内容をまとめますと、これ以外は不妊症や不育症における子宮内細菌叢、免疫療法、ネオセルフ抗体検査のトピックの構成でした。
当院の発表は子宮内細菌叢と免疫についての相関関係に加えて、慢性炎症との相関についても合わせて解析した発表です。
それ以外に免疫についての臨床発表は以下の2つの演題でした。
2.分娩既往のある体外受精反復着床不全症例の免疫学的プロファイル
矢内原ウィメンズクリニック 黄木 詩麗
3.Th1/Th2比高値のART着床不全患者に対するタクロリムス療法の有用性の検討
英ウィメンズクリニック 吉村 早織
はじめのものは免疫状態についての指標のひとつであるTh1/Th2比を分娩しているグループと分娩していないグループで分けて、この2つの集団でのTh1/Th2比の分布の違いを調べた研究です。
もう一つは、Th1/Th2比が高い免疫異常の着床不全症例に、免疫状態を抑える効果のあるタクロリムスという治療薬を投与して、その効果をみた研究になります。
2つの研究結果をまとめますと、最初の演題では分娩は免疫状態を表す指標の内、Th1の値を上昇させる傾向にあるが、Th1/Th2比には影響を与えない。
次の演題ではTh1/Th2比が10.3以上の免疫異常の症例にタクロリムスを投与した場合、胚移植あたりの生児獲得率は、未治療のグループの9.4%から治療のグループでは23.9%に上昇するということでした。
当院では体外受精胚移植は行っていませんが、不育症症例・流産既往不妊症でも、Th1/Th2比の高い免疫異常の症例に対しては、タクロリムスを投与して良好な治療成績を上げています。
詳しい治療内容を知りたい方は、不妊外来あるいは不育症外来を受診してみてください。
当院も一般演題(臨床)において、不育症や着床不全不妊症と免疫についての以下の発表をしています。
1.慢性炎症および免疫異常が子宮内細菌叢に与える影響について
まつみレディースクリニック 松見 泰宇
懇親会でも、免疫療法についてまで掘り下げて情報交換ができました英ウィメンズクリニックの吉村先生と柴原先生とのスリーショットの写真はfacebookもご覧ください。
わたくしの発表写真を撮っていただいた杉山産婦人科新宿の中川院長先生と矢内原ウィメンズクリニックの黄木先生とも、情報交換会以外に個別にたっぷりお話ができまして、大変有意義な学会参加となりました。