ちょうど1か月前に神戸で開催された、日本生殖医学会の報告の続きです。
今回の学会参加報告は不育症の発表にfocusして3部作のシリーズでお伝えしています。
構成は、1.抗精子抗体の話、2.子宮内膜における子宮NK細胞の話、3.子宮内膜のM2マクロファージの話です。
今回の発表は、北里大学と富山大学と東京大学との共同研究で、研究の指導者は、3つの大学に在籍された吉野修北里大学准教授です。
ちなみに、吉野修先生は、東京大学でわたしが病棟勤務をしていたときの研修医でしたが、そのころからとても優秀な先生でした。
発表の前に、フロアーで吉野先生を見つけ、久しぶりにご挨拶。
一般の方にはかなり難しい内容だと思いますので、前編と後編の2回に分けて、可能な限りわかりやすく報告してみます。
まず、基本的な単語を覚えましょう。
①マクロファージ:白血球のひとつ。死んだ細胞や細菌などの異物、体内の変性物を除去する(=貪食する)作用がある。
ファージ(phage)には「食べる」という意味があります。
マクロファージには、M1マクロファージとM2マクロファージのサブタイプがあり、M1マクロファージは抗菌及び抗ウイルス活性、抗腫瘍効果を発揮する。
M2マクロファージは炎症の制御や炎症後の組織修復に関与する。
M1マクロファージは炎症性サイトカイン(=細胞が分泌するTNFα、IL-6などのタンパク質)をM2マクロファージはIL-10などの抗炎症性サイトカインを分泌する。
M1とM2の状態は局所環境の変化(=局所因子の作用)により、可塑的(わかりやすくいうと、リバーシブル)である。
②増殖と分化:細胞の数が増えることと細胞の形質(性質)が変わること。
例えば、卵巣顆粒膜細胞はエストロゲンを分泌するが、分化して黄体化顆粒幕細胞となり、主にプロゲステロンを分泌するように性質が変わる。
③Wntシグナル:羽のない(wingless)ハエの研究から発見された、細胞の増殖や分化を制御するタンパク質であるWntの活性化により情報が伝達する経路。
情報の伝達(シグナル)には3種類の経路があるが、β-カテニン経路が古典的。
では、後編にてご発表を解説してみます。
すでに、単語が難しく、おなか一杯でしょうか?
年末ですが、暴飲暴食、注意です。