本郷にて開催された第2回子宮腺筋症の妊孕性温存を考える会の最終報告です。
前回は、子宮腺筋症とKRAS遺伝子異常についてご紹介しました。
最後(ラスト)は、子宮腺筋症合併妊娠の取り扱いに関するセッションの話です。
このセッションの最初の演題は子宮腺筋症の妊娠合併予後、妊娠予後への影響についてでした。
子宮腺筋症合併妊娠に関する全国のデータを解析し、日本産科婦人科学会周産期委員会報告の統計と比較して考察を行ったところ、
①子宮腺筋症合併妊娠では、流産率(24.8%)、さらに12週以上の流産(10.1%)の割合がともに高値。
また、
②子宮頚管無力症(=子宮の出口が開いてくる病気)(6.7%)、妊娠高血圧症候群(=妊娠中に高血圧になる病気)(10.9%)、子宮内胎児発育遅延(13.0%)、子宮感染(8.0%)の合併症も多いという結果でした。
子宮腺筋症の性状によりこれらの周産期予後は異なり、びまん型の方が腫瘤形成型よりも合併症は多く認められ、また、腫瘤が6㎝を超えると有意に影響があることがわかりました。
同じセッションの最後(オオラス)の演題では、子宮腺筋症病巣除去術(核出術)(=adenomyomectomy)が与える、①子宮破裂や②癒着胎盤、また③帝王切開時の出血量(の増加)などの様々な周産期予後に関して、東京大学の永松准教授が詳しく解説されました。
子宮腺筋症病巣除去術は、妊娠高血圧症候群や後期流産・胎児発育不全を改善しますが、上記の3つの合併症が起きるリスクがあります。
特に、子宮破裂は、子宮腺筋症病巣除去術後の場合は、他の原因と比べると少し早い妊娠中期に突然の破裂として発症するという特徴があることがわかりました。
岩手から埼玉医療センターに戻ってこられた周産期がご専門の菊池明彦教授にも久しぶりにご挨拶できまして、学会場をあとにしました。
晴れた2月の日曜日、学会参加に満足し心地良い一日でした。