新型コロナ肺炎の影響で、学会が次々と延期、または、WEB開催になっています。
わたしは予習が好きなので、基本的に学会に参加するときには、先に学会誌に目を通すのを習慣にしています。
今回は、楽しみにしておりましたが残念なことに中止となってしまいました「第15回日本生殖発生医学会」の(予習した内容の)報告です。
今回の学会長は浅田レディースクリニックの理事長の浅田義正先生でした。
どれも興味深い内容でしたが、日本の生殖補助医療の現状をまとめた演題と再生医療に関する基礎研究の演題と難治性不妊症に対する新しいアプローチについての演題の3つに絞り、ご紹介したいと思います。
浅田レディースクリニック顧問の斉藤英和先生は「日本の生殖・生殖補助医療の現状と課題」というタイトルで最近の生殖補助医療の日本全体の成績をまとめられていました。
概ね、日本では約45万の採卵数(治療周期)で、40歳以上の占める割合が4割を越しています。
治療の成績ですが、生産率(健康な赤ちゃんを産んだ割合) は、20歳代から32歳くらいまでは約20%ですが、40歳代では8%と減少し、45歳を過ぎると1%を割り込みます。
胚移植を新鮮胚と凍結融解胚の2つに分けて比較してみると新鮮胚移植(=発育した受精卵を採卵した周期に子宮内に戻すこと)は凍結融解胚移植(=発育した受精卵を一度凍結し、次回以降の周期に、凍結した受精卵を融解し移植すること)と比べて、①出生児の体重が約100グラム軽く、②癒着胎盤や妊娠高血圧症候群などの合併症が発症する割合は低いという結果です。
この他にも、生殖補助医療のプロトコールにより結果は少し変わるようで、新鮮胚で出産した人の性別を調べてみると、受精卵を3日培養した後移植した場合(=初期胚移植)と5日培養した場合(=胚盤胞移植)で比較してみると、後者の方が男性になる率が若干高いという結果でした。
また、凍結融解胚移植の場合には、胚移植を、自然周期(=自然の排卵に合わせて受精卵を移植すること)とホルモン補充周期(=ホルモン剤を用いて子宮内膜の環境を整えて、受精卵を移植すること)の2つに分けて比べてみると、①早産や過期産、あるいは②妊娠高血圧症候群や癒着胎盤といった合併症はホルモン補充周期の方が増加するという結果でした。
斎藤先生には、わたしが留学帰りに国立成育医療研究センターにお世話になったときに大変熱心にご指導賜りました。
今回の学会では、是非、ご挨拶したかっただけに大変残念な学会中止のお知らせでした。