WEB開催となってしまいました第19回日本再生医療学会の参加報告の続きです。
産婦人科に関連する演題としては埼玉医科大学総合医療センター産婦人科の矢部慎一郎講師が「人工多能性幹細胞からの合胞体性栄養膜誘導」という演題で発表されていました。
人工多能性幹細胞と言うのは、ノーベル賞を受賞した京都大学の山中教授が世界的権威で有名なiPS細胞のことです。
合胞体性栄養膜、なかなか難しい単語ですが、これは栄養膜合胞体層(syncytiotrophoblast)とも呼ばれていまして、胎盤の絨毛(=胎児になる細胞成分)を子宮内膜に生着させる役割があります。
胎児の栄養膜(トロホブラスト:trophoblast)は、外側の細胞層である合胞体性栄養膜の層とその内側にある細胞性栄養膜(cytotrophoblast)の層に分かれています。
ちなみに、この細胞(合胞体性栄養膜細胞)は細胞分裂せず、その内側にある細胞性栄養膜(cytotrophoblast)の細胞同士が融合することで形成されます。
少し難しい単語をわかりやすく説明すると、合胞体とは、細胞同士が融合することでできる細胞のことを指します。
合胞体性栄養膜細胞には、細胞の外側の特異的な構造(=主要組織適合性複合体:Major Histocompatibility Complex;MHCと呼ばれます)がないため、母体の拒絶反応を受けません。
この細胞は、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)を分泌します。
ちなみに、妊娠反応のキットなどで検出しているのは、尿中にあるこのホルモンです。
ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)は、黄体(=妊娠黄体ともいいます)に作用して、プロゲステロンとエストロゲンの分泌を調節し、妊娠を維持します。
今回の発表では、iPS細胞から合胞体性栄養膜が誘導される過程が、さまざまな指標(特徴的なタンパク質の存在や構造など)から示されていました。