日本産科婦人科学会のシンポジウム2、「妊孕性改善と生児獲得を目指したpreconseption care(プレコンセプションケア) 」で発表された「慢性子宮内膜炎」の話の続きです。
今回の発表は、子宮内膜が受精卵(胚)を受け入れる力(胚受容能)を検討するために体外受精胚移植の患者を対象とした臨床研究で、凍結融解した移植胚(受精卵)を用いて検討されてます。
内容としては、
①慢性子宮内膜炎がある場合とない場合で受精卵を移植したあとの妊娠率、着床率、継続妊娠率の比較。
②慢性子宮内膜炎における子宮内膜の特徴を検討するため、着床期の子宮内膜のホルモン受容体(受容体はブログ参照)の有無などを検討。
③子宮内膜が十分成熟している(=脱落膜化していると表現します)ことの指標として、プロラクチンとIGFBP1というタンパク質の(発現)量を検討。
④慢性子宮内膜炎と診断された患者さんに抗菌薬を投与し、治癒した患者さんに対して同様に妊娠率、着床率、継続妊娠率を比較。
結果は
①体外受精を受けている患者さんのおよそ半分(45%)に慢性子宮内膜炎が認められる。
②慢性子宮内膜炎がある場合は、ない場合と比較して妊娠率、着床率、継続妊娠率がいずれも低下していたことから、慢性子宮内膜炎は着床障害の原因となる。
③慢性子宮内膜炎があると子宮内膜ポリープが存在することが多い。
④慢性子宮内膜炎があるとホルモン受容体(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体)の発現量に異常がある。
⑤慢性子宮内膜炎の子宮内膜は脱落膜化(=子宮内膜が成熟していること)を示すプロラクチンやIGFBP1というタンパク質の分泌(=発現)が少ない。
まとめると、慢性子宮内膜炎の患者さんは、子宮内膜ポリープを持っていることが多く、プロゲステロンの受容体の量に異常があるためホルモンに対する反応性が悪く、子宮内膜が成熟しないので胚受容能が悪く、着床障害(=不妊)の原因となるということになります。
このような慢性子宮内膜炎ですが、抗生剤を投与すると治ることがわかっています。