関東生殖医学会の学会報告の続きです。
基調講演は西井修教授が座長をされまして、上杉富之成城大学文学部教授の「生殖補助医療をめぐる近年の社会的・文化的な変化と倫理的課題―文化人類学の観点からー」でした。
不妊症の患者さんの子宮内フローラ検査についての演題も大変勉強になりました。
腸内細菌、あるいは、腸内細菌叢、腸内フローラという単語を目にする機会があると思います。
フローラ(flora)は植物を示す用語で、腸内マイクロバイオーム(microbiome)の方が、生物と細菌叢との関わりまでを含み、学術的な単語です。
ちなみに、細菌叢を微生物の集団という意味のみで訳した場合にはmicrobiotaという単語を用います。
近年、下痢や便秘だけでなくストレスや免疫状態によっても腸内細菌叢の構成に変化が生じることがわかってきました。
一方、積極的に、腸内細菌叢ををコントロールして(=腸内細菌のバランスを整えて)、腸内の環境を良好に保つといった効果をうたった食品も販売されるようになってきています。
さて、子宮内細菌叢の話です。
子宮内細菌叢をみる検査として、EMMA(Endometrial Microbiome Metagenomic Analysis:子宮内マイクロバイオーム検査)という検査が産婦人科(特に不妊症を扱うクリニック)でも導入されるようになりました。
子宮内膜マイクロバイオーム検査は、子宮内の細菌環境が胚の着床(=胚移植)に最適な状態であるかどうかを判定する検査です。
細菌を調べる方法といえば、細菌培養法が最もスタンダードな手法でしたが、細菌培養検査では菌が検出できないこともあります。
しかし、最新技術を用いた子宮内膜細菌叢の検査では、培養できない細菌も含め検出することができます。
採取された子宮内膜の検体から(細菌の)細胞のDNAを抽出し、細菌の細胞の遺伝子配列(詳しく説明すると、16SリボソームRNAの遺伝子配列)を決定します。
子宮内膜マイクロバイオーム検査で、子宮内全体の細菌の状態に関する情報(=存在する細菌の種類と割合)がわかります。
乳酸菌(乳酸桿菌:Lactobacillus)の割合が高いといい状態です。