先日は港区医師会三田地区の講演会に参加してきました。
本日の講演は「筋痛をきたすリウマチ性疾患の鑑別」というタイトルで、東京慈恵会医科大学の吉田健講師が大変わかりやすくレクチャーしてくださいました。
リウマチというのは「骨の免疫」に関する病気です。
私が学生の頃は「骨免疫学」という領域の学問がありませんでした。
1990年代後半に「RANKL」というタンパク質が新たに同定されてから、骨免疫学(osteoimmunology)という骨と免疫系との相互作用にフォーカスした領域のライフサイエンスが発展してきました。
骨免疫学を創造された母校の免疫学教授は、先日、日本学士院賞を受賞されたとのプレスリリースがありました。
さて、リウマチの話です。
関節リウマチは
「朝、手がこわばって、動かない。」
「関節が腫れて、痛い。」
といった症状の自己免疫性疾患というカテゴリーに属する病気です。
自己免疫疾患を診断するためには、自己抗体という自己の組織(=抗原)に対する抗体というタンパク質の存在を調べることが必要です。
吉田先生のお話は「筋痛をきたすリウマチ性疾患の鑑別」というタイトル通り、リウマチの話というよりは、筋炎(筋膜などの筋肉の組織が炎症を起こし、痛みを生じる病気)の話がメインでした。
筋炎(皮膚筋炎や多発性筋炎)も自己抗体で起きることがあり、学生時代に習った「抗Jo-1抗体」という抗体は、今では、ARS (aminoacyl-tRNA synthetase) という、トランスファーRNA(tRNA:RNAのひとつです)とアミノ酸の作用に関係する酵素、に対する抗体(抗ARS抗体)という範疇に属すること、ASS(anti-synthetase syndrome:抗合成酵素症候群)という症候群があることなど、初耳学。
吉田先生は、懇親会でもいろいろとディスカッションに付き合ってくださいまして、他科の話は刺激的でした。
ちなみに、不育症も自己免疫(自己抗体)が原因で起きることがあります。
自己抗体には多くの種類がありますが、クリニックでは、大学病院や不妊症専門病院と同じ検査項目を全て検査することも可能ですし、代表的ないくつかの項目のみを調べることもできます。
オーダーメードの診療を心がけていきたいものです。