まつみレディースクリニック三田

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第64回日本生殖医学会報告 (1):不育症の臨床研究編: 抗精子抗体 

今年は東京で開催された受精着床学会に参加することができなかったので、神戸にて開催された日本生殖医学会に参加してきました。

 

学会初日は、懇親会のディナーかありまして、東京大学産婦人科大須賀教授や体外受精の世界的権威である木場公園クリニックの吉田理事長、留学帰りにお世話になりました日本の生殖医学の代表的な研究者の埼玉医大産婦人科の石原主任教授や梶原教授とも久しぶりにご挨拶出来まして、大変実りある学会初日でした。

宜しければ、懇親会の模様は、Facebookをご覧くださいませ。

 

初日のランチョンセミナーは、ハーバード大学からいらっしゃったJorge E. Charvarro先生のご講演を選択しました。

ランチョンセミナーについては、別の機会に改めて報告します。

 

不育症の勉強が最近楽しく、今回の学会参加報告は、まず、学会2日目の不育症のセッションの発表にfocusしてお伝えし、続きましてシンポジウムの内容なども報告する予定です。

不育症の発表はどの発表も勉強になりましたが、そのうちの3つをシリーズでご紹介します。

 

お話は、

1.抗精子抗体の話。

2.子宮内膜における子宮NK(natural killer)細胞の話。

3.子宮内膜のM2マクロファージの話。

です。

 

最初は、わかりやすい抗精子抗体の話から。

抗精子抗体 (anti-sperm antibody :ASA) というのは精子に対する(=精子を抗原とする)抗体(というタンパク質)の名称で、抗精子抗体が原因の不妊は免疫性不妊症というカテゴリーに属します。

抗体という単語についてはブログで何度も出てきますので、よろしければ過去ブログをご参照下さいませ。

 

精子を不活性化する作用のある抗精子抗体(=抗精子不動化抗体あるいは抗精子凝集抗体)は受精を阻害する原因にもなります。

抗精子抗体は血液検査によってその存在が確認されますが、子宮頸管粘液、子宮腔内、卵管液にも存在するため、受精までのあらゆる過程で悪影響をおよぼす可能性があります。

ちなみに、卵胞液などの体液にも抗精子抗体の存在は確認されています。

 

抗精子抗体検査をスクリーニング検査で行う不妊専門施設が多いですが、当院では自費検査であることも考慮して、フーナー検査(PCT:post coital test:性交後試験)があまり良くなかったり、人工授精(AIH:artificail insemination of husband)反復不成功の患者さまに対して行う二次検査としています。

もちろんご希望の方には初回のスクリーニング検査に、抗精子抗体も追加して調べることが可能ですが、当院では診療費のうちの(お薬代などの)治療に要した費用の占める割合を多くしたいため(わかりやすくいうと、なるだけ陰性の可能性が高い検査にかかる費用を減らしたいため)、このような診療方針としています。

 

一般的には、抗精子抗体が陽性でも抗体価が低い場合には人工授精を試みる価値もあると考えられています。

さて、今回のご発表では、抗精子抗体は不妊専門クリニックに受診し研究に参加された患者さまの約0.7%、33例(4465例中の33例です。)に認められ、この陽性の方33例を対象として統計解析が行われています。

教科書的には、抗精子抗体は不妊女性の概ね3%に抗精子抗体が認められるとあるので、陽性率が低い(=正常例が多い)母集団であったことが推測されます。

ちなみに、抗体価(=抗体の量、強さ)により抗体強陽性(Strong Positive)と弱陽性(Weak Positive)に分けて解析されていました。

 

結論では、抗体価が弱陽性の症例では、約2割(3/16)でタイミング法で妊娠が認められたとのことでした。

抗精子抗体がある場合、体外受精と顕微受精で比べると、受精卵の育ち方(=胚盤胞到達率)や妊娠率に差がありました。

また、約3割の患者さんで抗体価に変動があるという結果でした。

 

ところで、抗精子抗体は女性だけではなく男子にも存在します。

ちなみに、Lotti Fらの論文「Epididymal more than testicular abnormalities are associated with the occurrence of antisperm antibodies as evaluated by the MAR test.:Human Reprod 2018 」にもあるように、男性の抗精子抗体は精巣(testis)の損傷よりも精巣上体(epididymis)の炎症と関係があると報告されています。

もちろん、抗体陽性率は男性の場合でも、不妊症のカップルの方が高いです。

 

精巣上体、聞きなれない単語ですが、「副睾丸」とも呼ばれる精子の貯蔵庫です。

 

原文には「our results indicate that MAR test positivity (=抗精子抗体の陽性率)is associated with clinical and US signs suggestive of chronic epididymal inflammation and not testicular damage. (一部改変)」とありました。

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