神戸で開催された日本生殖医学会の報告の続きです。
不育症の勉強が最近楽しく、今回の学会参加報告は不育症の発表にfocusして3部作のシリーズでお伝えしています。
構成は、1.抗精子抗体の話、2.子宮内膜における子宮NK細胞の話、3.子宮内膜のM2マクロファージの話です。
抗精子抗体の話は臨床統計の話でしたが、残りの2つは基礎医学研究のご発表でした。
今日は、2つ目の話、「子宮NK(natural killer)細胞:子宮のナチュラルキラー細胞」について説明してみます。
今回の学会では、子宮NK細胞に関する発表は2題ありましたが、ともに兵庫医科大学産婦人科学講座の発表でした。
ちなみに、兵庫医科大学産婦人科の柴原浩章教授は日本生殖免疫学会の理事長をされています。
奈良にて、第34回日本生殖免疫学会は、14th World Congress of the international Society for Immunology of Reproductionと同時開催されておりまして、わたしは昨日、外来終了後より、新幹線です。
子宮NK細胞は、妊娠の初期に増加して妊娠の成立・維持機構に重要な役割を果たしています。
NK細胞(natural killer cell:ナチュラルキラー細胞)については過去の不育症のブログ(2018年4月18日、19日、21日など)もあわせてご覧ください。
特に、NKp46(というタンパク質)を発現している(=がある)子宮NK細胞は細胞傷害作用やサイトカイン(=IFN-γなどの細胞が分泌する化学伝達物質)産生作用と関係があります。
これまで福井先生の研究グループは、一貫して、子宮内膜症患者の腹水中や不妊症・不育性患者の子宮内膜組織など、生殖作用において異常がある患者さんでは、NKp46(というタンパク質 )のある(=発現している)NK細胞の数が低下していることを報告してきました。
今回の発表では、
①不育症の患者さん(の22例)全体の解析で、妊娠の成立・維持に重要な役割をもつ子宮NK細胞の性質に異常が認められた。
②22例の中で、特に細胞障害作用が強い(=不育症の程度がひどい)グループに着目して解析すると、不育症の程度が重症の集団では
NKp46のある(=発現している)子宮NK細胞の数の低下にともない、子宮の基底層(=子宮筋組織と接するところ)にある動脈(=らせん動脈)のリモデリング(=再構築)に関して必要なサイトカイン(=細胞が分泌する情報を伝えるタンパク質)であるIFN-γの産生量も低下している。
ということがわかりました。
妊娠の維持には、子宮のらせん動脈が正しく構築されることが必要なため、NKp46という受容体(=タンパク質)のある子宮NK細胞の数が少ないこと(さらに、動脈の再構築に必要なIFN-γというサイトカインの産生が少ないこと)が不育症の原因となっている可能性があると推測されました。
春日野にて、学会のレセプションパーティーで、柴原先生と福井先生にもご挨拶。
神戸で興味を持った点をディスカッション出来まして、実りある、奈良の初日とならました。
日本生殖免疫学会の詳しい学会参加報告は、もうしばらく先とならます。
なら なう。