早いもので、11月から2か月が経ちました。
神戸で11月に開催されました日本生殖医学会の学会参加報告の続きです。
不育症の発表にfocusしてシリーズでお伝えしましたが、その他にも興味深い演題は数多くありました。
シンポジウムから2つだけ、①生殖医療における統合医療、②妊孕性温存療法の新展開をご紹介します。
最初は、「生殖医療における統合医療」について。
このシンポジウムは4つの講演から、構成されておりました。
①統合医療をエビデンス化する
②The role of the one carbon metabolism on fertility and infertility treatment
③生殖医療における栄養療法の関わり
④鍼灸の生殖領域における未来
②の発表が面白かったので、今回は②「The role of the one carbon metabolism on fertility and infertility treatment」について詳しくお話します。
演者はJorge E,Chavarro先生、Harvard Univ.のAssociate Professorです。
先生はランチョンセミナーにて精子に関するご講演もされました。(2019年11月18日:第64回日本生殖医学会報告:ランチョンセミナー参照)
One Carbon Metabolismとは、葉酸,メチオニン,ビタミンB12という3つの栄養素の代謝(=生体で分解されること)経路のことです。
この経路(=pathway:流れ)には葉酸の代謝とメチオニンの代謝が含まれます。
この経路に関連する代謝物(=産生される)アミノ酸(S-アデノシルメチオニン:SAM)は、DNAや(DNAの長い鎖の骨格になる)ヒストンを変化させます。
葉酸は聞きなれた単語ですが、「メチオニン」、馴染みにくい難しいカタカナですね。
メチオニンに関しては、過去のブログ(2019年4月20日、2019年4月21日)もご参照くださいませ。
メチオニンはホウレンソウなどの植物に多く含まれるヒトの体内で作り出せない必須アミノ酸で、動脈硬化などと関係があります。
血液中のメチオニンの量が多い(=濃度が高い)と、血栓症を起こすことがあります。
DNAやヒストンの変化は、難しい単語で説明すると「DNAメチル化またはDNAのメチレーション」と言いまして、DNAを構成している炭素原子にメチル基(=メチルアルコールやメタンガスの化学構造の一部)が結合する化学反応のことです。
DNAのメチレーションに関しては、過去のブログ(2018年9月17日、2018年9月18日)もご参照ください。
思いのほか、前置きだけで長くなってしまいましたので、簡潔に、今回のご発表をまとめますと、
「葉酸(ビタミンB9),メチオニン,ビタミンB12の代謝(=生体内で分解されること)は、DNAのメチル化という細胞の遺伝子の変化(=修飾)や細胞増殖と密接に関わりがあるため、母親側(および胎児側の双方)から着床機構に影響を与える(ので妊婦および妊娠を希望される方は十分にこのような栄養素を摂取することが必要である)。」
ということです。
大変、お疲れさまでした。
葉酸、ようさん、取ってください。