神戸で開催された日本生殖医学会の最後の報告です。
シンポジウム「妊孕性温存療法の新展開」も大変興味深かったです。
座長は、わたしの母校の先輩で、埼玉医療センターにいらっしゃる高井泰教授です。
高井教授はわたしの1学年上の先輩で、研修医のころから、今日に至るまで大変お世話になっております。
今回の学会報告は、かなり細かい話に偏ってしまいましたが、最後は患者さまもわかりやすい話です。
シンポジウム「妊孕性温存療法の新展開」は4つの演題から構成されておりまして、
①:子宮移植の現状と今後の展望について
②:卵巣組織移植の成績向上をめざしたアプローチ
③:小児がん患者の妊孕性温存療法につい
④:男性がん・生殖医療の展望について
でした。
どの演題もご紹介したいのですが、①「子宮移植」について報告させていただきます。
子宮移植の発表は、いつも慶應義塾大学産婦人科からです。
慶応義塾大学は2009年から、ヒト以外の霊長類であるカニクイザルを用いて、子宮移植後の出産に世界で初めて成功しております。
一方、海外では、すでに60例近くの子宮移植が実施され、これまでに15名の児が誕生しています。
子宮性不妊症は子宮が存在しない、あるいは、子宮が存在しても異常があり、機能しないことによる不妊のことをいい、先天性と後天性に大別されます。
わが国において生殖年齢(20~40 歳)における子宮性不妊患者は約6~7万人存在すると推計されています。
子宮移植のドナー(=臓器の提供者)の候補者は,死体ドナーとしては脳死・心停止ドナーが挙げられます。
一方、生体ドナーでは母親や姉妹などの親族間や第三者が考えられます。
生体ドナーの場合,手術に伴う身体的負担のみならず,精神的および心理社会的負担に配慮する必要があります。
分娩は帝王切開となるが、出産後に移植された子宮を摘出した場合は,レシピエント(=臓器を提供された患者)は(移植された臓器の拒絶反応を抑えるための)免疫抑制剤の服用を中止することができる。
子宮移植は、生体ドナーに侵襲の高い手術という負担をかけますが、その最大のメリットは,子宮の提供を受けたことで遺伝的な親が産みの親になれる点です。
遺伝的な親が産みの親となることで、代理懐胎と違って「法的な母親」となるため、生まれた子の法的地位は確保されることになります。
埼玉医療センターの高井教授、慶応義塾大学の吉村名誉教授とも久しぶりにゆっくりご挨拶できまして、大変有意義な学会参加となりました。
以上、去年の11月に神戸にて開催された第64回日本生殖医学会の学会参加報告でした。
皆さま、長い間、お疲れさまでした。