本郷にて開催された「第2回子宮腺筋症の妊孕性温存を考える会」の参加報告の続きです。
ランチョンセミナーは国立がん研究センターと東京大学と順天堂大学の3つの施設の共同研究で、少し前に有名な科学雑誌のネイチャー(正確にはNature Communications:Nat Commun)に発表された最新の研究成果でした。
都営三田線の車内で、前日に印刷したNature Communicationsの論文を斜め読みして春日駅を目指しました。
今回の研究では、子宮腺筋症の患者さんでは、子宮腺筋症の病変部位のみならず、病変周囲の病理学的に正常な子宮内膜の組織でもがん遺伝子(KRAS)の遺伝子異常(ゲノム異常)が高頻度で発生していることがわかりました。
このことから、子宮内膜組織において発生した細胞(クローン)が子宮腺筋症の起源クローンである可能性が示唆されました。
KRASという遺伝子は細胞の増殖に関わっている遺伝子で、HRASなどとともにRASファミリーというグループに含まれます。
わたしの大学院博士課程の研究テーマは「卵胞発育・閉鎖におけるNO情報伝達系の役割」です。
当然ながら、生殖医学の研究テーマですが、「NO情報伝達系」に関する当時の日本の権威のひとり、国立がん研究センター東病院の敷地内にある国立がんセンター研究所支所の江角浩安支所長のご指導を賜りまして、院生の頃は、細胞を培養したり遺伝子を抽出したりという毎日を過ごしておりました。
国立がんセンター研究所支所は、築地ではなく柏の葉にありまして、柏の葉公園は緑が多く、とても良い環境でした。
ちょうど、この頃に、大腸がんの組織ではKRASの遺伝子異常が高頻度で発生していることやKRAS遺伝子に異常のあるものは抗がん剤が効きにくいというようなことがわかって論文がチラホラと投稿されていたように思います。
クリニックには、およそ四半世紀前に江角先生や皆さまからいただいた記念の実験器具が飾ってありますが、KRASという単語、とても懐かしかったです。
ラストは子宮腺筋症と周産期管理についての発表をご紹介します。