夏季休暇中、月経困難症についての研修会(WEB講習会)を受講しました。
この研修会は、正確には、日本産科婦人科学会主催の「器質性月経困難症に対する適切なホルモン療法等に係る研修」で、講師は東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講座の甲賀かをり准教授などで、全6回でした。
研修会のイントロダクションを担当された甲賀先生には、当院にかかられている子宮内膜症の患者さんで腹腔鏡下手術が必要な方をご紹介させていただいて、いつも大変お世話になっております。
講義の内容は概ね既知の内容でしたが、数多くの論文を簡潔にご紹介してくださり、知識の再確認にはとても役立ちました。
①月経期間中に随伴する「病的な」症状は月経困難症と定義され
②「病的な」とは「本人が困っている」状態で、月経痛が強ければ月経困難症として医学的に介入して(=鎮痛剤を処方して)よいということ
③シネMRIというMRIで撮影した画像をコマ送りした動画では、子宮が月経血を排出するために子宮底部から頚部にかけて収縮する様子が月経期間中だけに認められる(=排卵後には認められない)のが痛みの原因となっているということを視覚的にわかりやすく解説されていました。
また、
④生殖年齢の3割の方が鎮痛剤を飲んでいて
⑤月経の回数は昔と比較してみると、生涯で40~50回から約9倍の450回に増えたこと
⑥社会経済的には、月経困難症によるわが国の経済的損失は1年で6800億円で、その70%が女性の労働機会(=就労機会)の消失によること
という話や
⑦器質的月経困難症には、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫という3つのメジャーな病気以外に、Wonderlich syndrome、非交通性副角子宮などの子宮形態異常もあることを忘れてはならないこと
⑧臨床的子宮内膜症の概念など
を解説されていました。
月経困難症の治療には、鎮痛剤以外に、①LEP②ジェノゲスト(=ディナゲスト)③GnRH アナログ(=GnRHアゴニストとGnRHアンタゴニスト)という治療薬や④LNG‐IUS(=レボノルゲストレル放出子宮内システム:ミレーナ)などの薬物療法、さらには、手術という治療オプションがあります。
それぞれの症状や病気(=病巣)の程度だけでなく、ライフスタイルおよびライフステージに応じて、質の高い医学的介入(=治療)をしていくことが求められています。