スタッフがブログをどんどん書いてくれるおかげで、公開が大変遅くなりました。
9月に開催された母体保護法指定医師研修会の参加報告の続きです。
母体保護法指定医師研修会のご講演はいずれもためになるものでしたが、昭和大学医学部産婦人科学講座の関沢明彦教授の生命倫理に関する演題は大変勉強になりました。
「出生前遺伝学的検査の現状と生命倫理」というタイトルで、出生前検査診断の概念や新型出生前検査の現状をワールドワイドに解説して下さいました。
出生前検査・診断には妊娠中の超音波検査も含まれます。
例えば、超音波検査によって胎児十二指腸閉鎖や臍帯ヘルニアといった胎児構造異常が認められることがあります。
胎児十二指腸閉鎖の30%にダウン症が認められ、臍帯ヘルニアの中から40%に染色体異常が認められます。
従って、先に述べたような超音波検査の所見によっては出生前診断のために胎児の染色体検査について説明しなければならない状況が起こる可能性があります。
母体保護法には胎児条項がありませんが、染色体検査によって異常が認められた場合の選択については、さまざまな難しい倫理的問題を含みます。
医学における生命倫理の基本原則(自律の尊重、善行、正義、無危害の4つ)に沿って、患者さまの権利(Reproductive Health/Rights:リプロダクティブヘルス・ライツ)を尊重し、意志決定のアドバイスをすることが重要だと考えられます。
後半は、出生前検査の1つのNIPT検査の話でした。
2020年7月の調査によると現状では、日本では、いわゆる無認可の施設が認可施設よりも多いです。
認定施設と無認定施設を比較すると、判定保留率は認可施設で0.6%に対して無認可施設で2.3%、陽性率は認可施設で1.7%に対して無認可施設で0.5%と、検査の精度は無認可施設と認可施設で若干結果によって差があります。
また欧州ではNIPTの検査システムの構築の仕方が、オランダ、ベルギー、スウェーデン、ギリシャなど個々の国家により異なり、その結果、例えばダウン症児出生率の年次推移に諸国間の差が出ています。
今後日本でも、出生前カウンセリングなどの周産期遺伝医療の整備が進むことが期待されますが、当院もこの流れに遅れないように知識のアップデートに努めていきたいものです。