WEB開催となった第35回日本生殖免疫学会総会の参加報告の続きです。
生殖免疫学会というのは、不育症・習慣流産のベーシックサイエンスの学会です。
クリニックでは、不妊治療と妊婦健診の2つを診療の柱にしています。
特に、不妊治療を経て妊娠された患者さまが当院で引き続き妊婦健診をされたのち卒業し、分娩施設から分娩報告のお知らせのお手紙を受け取るのは、とても仕事にやりがいを感じさせてくれます。
開業に伴い分娩には携わらなくなってきましたが、また、機会があれば分娩にも立ち会いたいものです。
さて、不妊治療とともにクリニックの診療のもうひとつの大事な柱が不育症の治療です。
「開業医だからこそ出来る不育症治療」をご指導賜った青木産婦人科クリニックの青木耕治院長先生には、現在でも引き続き大変お世話になっています。
本題の学会報告ですが、6つの演題から構成される学会賞候補演題の中では、東京大学大学院医学研究科生殖・発達・加齢医学講座の永松研究室(=東京大学産科婦人科学教室永松健准教授)の柳澤愛実先生の発表が面白かったです。
演題は「妊娠高血圧症候群において酸化ストレスはNrf2シグナルを介してオートタキシンの発現を促す」というタイトルで妊娠高血圧症候群に酸化ストレスが関与しているかを調べた研究です。
臨床の専門用語の説明から入ります。
妊娠高血圧症候群(hypertensive disorders of pregnancy:HDP)とは、妊娠20週~産後12週までに血圧が上がった病態です。
高血圧のみの場合は「妊娠高血圧症」、高血圧とタンパク尿を認める場合は「妊娠高血圧腎症」と呼ばれます。
以前は、高血圧、タンパク尿。浮腫を3つの症状を特徴とする病態は妊娠中毒症と呼ばれていました。
近年はタンパク尿を認めなくても、肝機能障害、腎機能障害、神経障害、血液凝固障害や胎児の発育不良があれば、妊娠高血圧腎症と分類されるようになりました。
妊娠高血圧腎症(preeclampsia)になると、子癇(eclampsia)というけいれん発作や脳血管障害などを合併しやすくなります。
用語の解説が長くなってしまいましたので、続きは次回です。