12月5日の土曜日は、本郷3丁目まで赴きまして、東京大学産婦人科学教室同窓会研究会・総会に参加してきました。
この会は、年に一度、同窓会員(わかりやすく言い換えると、東大産婦人科出身のOB・OG)が本郷に赴きまして、研究会に参加するとともに、大学医局の現況を教えて頂く会でありまして、逆に医局側の立場になってみてみると、同窓会員の近況を知り、医局員と情報を交換する会合です。
交流を深め親睦を温めるため、例年は同窓会総会に合わせて同窓会忘年会も催されるのですが、今年は新型コロナ感染症のため、忘年会は中止。
同窓会研究会・総会は、上野の広い会議室でソーシャルディスタンスを保った距離にパイプ椅子が配置されておりまして、同窓会員は軽く挨拶するのみで、なかなか物々しい感じで開催されました。
会場ではクリニックの運営に大変お世話になっている藤井知行主任教授や大須賀穣教授には軽く会釈。
セミオープンでお世話になっている永松健准教授や手術を要する良性疾患をご紹介させていただいている廣田泰准教授、子宮内膜症の手術でお世話になっている甲賀かをり准教授はじめ、応援に来ていただきている上原真里先生とも軽くご挨拶ができました。
研究会の講演は「中高年女性のための女性骨盤センター設立」と「リスク低減卵管卵巣摘出術の導入と遺伝診療の実際」の2本立て。
特別公演は「妊産婦救命救急~そこにある危機への対応」というタイトルで、日本産科婦人科学会理事長の大阪大学木村正産婦人科主任教授のご講演でした。
現在、クリニックは月経異常や不妊症・不育症ならびに妊婦健診に主軸を置いた診療を行っておりまして、更年期症候群の治療や性器脱などの中高年女性に対する医療は積極的に行っていないため、今後当院の診療領域に加わる予定の2つ目の演題について簡潔に解説してみます。
リスク低減卵管卵巣摘出術は米国の有名な女優が手術を受けたことで、ご存知の方もいらっしゃると思います。
この手術は、遺伝性乳癌卵巣癌症候群(hereditary breast and ovarian cancer syndrome:HBOC syndrome)という、乳癌あるいは卵巣癌に遺伝的にかかりやすい(病気=症候群:syndromeの)患者さんに対して、予防的に(=卵巣癌や乳癌発症リスクを減少させる目的で)、卵管卵巣を摘出する手術です。
「遺伝的にかかりやすい」というのは、この病気の原因となっている遺伝子(=BRCAといいます)がわかっていて、この遺伝子の異常(=遺伝子変異)の結果で乳癌や卵巣癌が発症するということです。
最近の臨床研究では母集団によってはリスクを低減しないとする報告もあり,信頼できる施設で慎重な解釈のもとで、手術を受けられることが大切だと思います。
東京大学産婦人科でのカウンセリングや手術希望で紹介状が必要な方はクリニックの外来をご予約くださいませ。
医師やスタッフの増員により余裕ができてきましたら、月経異常や不妊症・不育症ならびに妊婦健診といった生殖領域の診療だけでなく、予防医学のひとつである遺伝子診断などの遺伝診療の領域にも、注力していく予定です。
研究会に続く、総会では、藤井知行主任教授の今年度の総括のお話を伺い、同窓生として身の引き締まる思いで、会場をあとにしました。
藤井知行主任教授は、1月から港区赤坂の山王病院長にご栄転されるとのことです。
来年度は山王病院ともますます連携を深めて、港区の地域医療に貢献するべく、精一杯診療を行っていきたいものです。