第42回日本エンドメトリオーシス学会の参加報告の続き、第5回です。
シンポジウム2の「子宮筋腫の発生進展メカニズム」という基礎的な演題を小分けにして解説しています。
今日は、その総集編です。
子宮筋腫が遺伝(=遺伝的要因)以外に環境(=環境因子)によって発症するメカニズムを解説してきました。
子宮筋腫は、マスター制御遺伝子であるSATB2とNRG1という2つの遺伝子に異常があり、発症します。
マスター制御遺伝子SATB2とNRG1の異常な命令によって、子宮筋腫では、筋腫を構成している細胞が増え、血管の透過性を増やす増殖因子や黄体ホルモン(=プロゲステロン)の作用に必要な細胞側の構造体(=プロゲステロンの受容体)などの量にも異常が起こります。
ここまでが、前半のまとめでした。
後半は、子宮筋腫には、筋腫のコブが硬いものと柔らかいものがあるという話を解説します。
また、子宮筋腫の70%はMED12という遺伝子に変化(=遺伝子変異)があることがわかりました。
さらに、このMED12遺伝子変異が陽性の子宮筋腫は固く腫瘍のサイズも小さく、一方、MED12遺伝子変異陰性の子宮筋腫は柔らかくて大きいということが分かりました。
組織学的には(顕微鏡で子宮筋腫を詳しく調べると)、MED12遺伝子変異が陽性の子宮筋腫は、陰性の子宮筋腫と比較して、筋腫の組織に線維が多く、このため子宮筋腫が硬いことがわかりました。
まとめると、この遺伝子の異常の有無により、子宮筋腫の腫瘤の性質が異なることがわかりました。
結論として、環境因子による後天的な遺伝子の変化であるDNAのメチル化の異常は、マスターレギュレーション遺伝子であるSATB2とNRG1という2つの遺伝子に異常を起こし、すべての子宮筋腫を発症させていることがわかりました。
一方、MED12遺伝子は、子宮筋腫の腫瘤の性質の違いに関係があることがわかりました。
大変お疲れさまでした。
次回は、少し柔らかい話、子宮筋腫の治療のお話です。