遅くなりましたが、日本生殖医学会主催の2021年度生殖医療従事者講習会の受講報告です。
今回の講習会を履修しまして、生殖医療専門医の資格を更新することになります。
講習会の内容の中からあまり馴染みがないですが、①生殖医療総論・トピック/生殖倫理・関係法規についてわかりやすく解説してみます。
現代の不妊治療は一般生殖医療と生殖補助医療に分けられますが、前者には無排卵症に対する排卵誘発や人工授精が含まれ、後者には体外受精胚移植や着床前試験が含まれます。
統計のお話をしてみますと、1978年に世界初の体外受精による児、ルイーズ・ブラウンが誕生しまして、2018年まででわが国では累計約65万人の児が出生したことになります。
世界の中でも日本は体外受精が広く行われている国で、2016年の統計では、米国のおよそ20万周期の倍以上の45万周期の治療がなされています。
2016年の統計では中国では、約50万周期の採卵がなされ、およそ30万人の児が体外受精・胚移植にて出生しております。
医療費負担については、英国やスウェーデンなどの北欧諸国は税金により基本的に無料、ドイツおよびフランスでは医療保険などの社会保障費、米国や中南米では全額自己負担の私費になります。
日本では医療保険制度はありますが生殖医療は含まれず、私費とされていますが、実際には特定不妊治療支援事業により一部税負担がされているのが現状です。
生殖補助医療を用いた医学研究の臨床応用については、特に、ヒト受精卵を用いたものについては、日本産科婦人科学会は日本生殖医学会などの関連する4つの学会と共同で、かねてより、ヒト受精卵を用いたゲノム(=個体の細胞内の遺伝子)編集などの臨床応用は禁止するべきであるとする立場をとってます。
ゲノム編集技術は、生命科学の研究には今や不可欠とも言える重要な研究ツールですが、現時点では精度や効率などの点でなお発展途上の技術であり、予期しない結果を生じる可能性があります。
遺伝子が改変されたヒト受精卵が成育して個体になるようなゲノム編集技術の応用は、遺伝子改変の影響が世代を超えて継続することから、人類の多様性、ひいては進化にまで影響するような重大な事態に繫がることが懸念されます。
従って、2016年4月の「人のゲノム編集に関する関連4学会からの提言」においても、ヒトの生殖細胞や胚に対するゲノム編集の臨床応用を禁止すべきであることを明確に提言しています。