火曜日担当の丸山です。
「先生、私体重大丈夫ですか?」
と妊婦さんにきかれることがあります。
概ね、増えすぎていないか心配でご質問を受けることがあるので、今回はそのお話をいたします。
今年(2021年)の6月に日本産科婦人科学会は妊娠中の体重増加の目安についてある指針を通達いたしました。
下記がその目安です。
BMIは体重(kg)を身長(m)の2乗で割った値です。
例えば150cm, 50kgの方であれば、
50÷(1.5×1.5)=22.22となります。
妊娠前のBMIが18.5未満ならやせ、18.5~25で普通、25-30で肥満(1度)、30-で肥満(2度)となります。
妊娠中の体重増加は、やせ:12-15kg、普通:10-13kg、肥満(1度):7-10kg、肥満(2度):個別対応(上限5kgまで)が目安です。
このような通達が出された理由は、2017年に発表された論文(Journal of Epidemiology, Pre-pregnancy BMI-specific optimal gestational weight gain for women in Japan. Morisaki et al)での統計結果が背景にあります。
この論文では、日本人の低出生体重児出生率(赤ちゃんが2500g未満だった割合)が1970年代の5.1%から2007年には9.5%まで増えてきており、その理由は母体の体重増加不良(つまり、やせ)が原因ではないかと推測されています。
もともとは体重の増えすぎが妊娠高血圧症候群(昔でいう妊娠中毒症です)や妊娠糖尿病の原因になるため、一部の日本の病院やクリニックでは体重管理がかなり厳しくされていたという背景があるようです。
上記の論文では初産の日本人女性104,979人を対象に妊娠前のBMIと妊娠転機(出生体重、分娩方法、早産、妊娠中合併症)の関連を調査しており、この結果、体重増加が適正な妊婦の方が、出生体重が多く、早産率が低いというデータが述べています。
それでは低出生体重児だと何が困るのか、
ですが、すべての例ではありませんが、心肺機能、体温調節、免疫不全などを来すことがあります。
また、低出生体重児が成人になった際に糖尿病、高血圧、高脂血症などのメタボリックシンドロームを発症するリスクが高いとされています。
このことは、DOHaD仮説(Developmental Origins of Health and Disease)という名称の、
「将来の健康や特定の病気への罹患のしやすさは、胎児期や生後早期の環境の影響を強く受ける」
という仮説でも提唱されています。
体重の増え過ぎは、確かに妊娠高血圧などのリスクにもなりますが、上記の仮設の考え方に従うと、個人的には妊娠中は適正に体重を増やすことも重要ではないかと考えます。