今回は、10月29日(金)と30日(土)に新宿京王プラザホテルにて開催された、第36回日本生殖免疫学会総会の参加報告です。
クリニックが診療に力を入れている不育症についての基礎的研究は日本生殖免疫学会の研究領域になります。
報告の第1回目は第36回日本生殖免疫学会総会と合同で開催された第49回日本臨床免疫学会のセミナーがわかりやすかったので、これをご紹介します。
面白かったセミナーは「粘膜免疫とmicrobiota」という演題名で、理化学研究所の大野博司先生のご講演でした。
ポイントだけお話しますと、
①:ヒトの体の細胞とフローラについては
(1)ヒトの体の中は約30兆個の細胞で構成されているが、大腸中には40兆個の、生殖系には1兆個のフローラ(細菌叢)が存在する。
(2-1)1681年にヒトの糞便中に多数の細菌が存在することが発見されて以来、1685年にパスツールが腸内細菌が人の生命の維持には不可欠であることを報告した。
(2-2)宿主の生存には腸内細菌が不可欠であるとするこの仮説はその後の無菌マウスの実験により否定された。
(3)ヒトの細胞には約2万個、腸内細菌40兆個には約100万個くらいの遺伝子が存在し、我々は細菌と一体化した超生命体であるといえる。
②:次世代シークエンサーの開発により、
(1)培養して細菌を多数のコピーに増やさなくても、1つのコピーの細菌からその遺伝子を解析することができるようになったこと、
(2)細菌の16S rRNA(リボソームRNA)を解析する技術が開発されたこと、
から、micorobiota(=細菌叢)の研究は進歩した。
③:これまでの統計的な解析から、
(1)寄生虫が存在する地域では自己免疫疾患の発生が少ないということ
(2)過剰なエネルギー摂取によって腸内の細菌層が乱れる(dysbiosis)とアレルギー性疾患が増える。
というようなこともわかってきている。
では、次回から、第36回日本生殖免疫学会総会の参加報告に続きます。
ご興味のある方はFacebookにて学会の模様もご覧ください。