今回が第36回日本生殖免疫学会総会の参加報告の最終回です。
クリニックが診療に力を入れている不育症についての基礎的研究は日本生殖免疫学会の研究領域になります。
これまでは、不育症や抗リン脂質抗体症候群やについて学会報告をしてきました。
月経逆流血の存在は、子宮内膜症の発症に重要な役割を果たしていて、腹腔内に逆流した月経血に何らかの因子が加わることにより、子宮内膜症が発症するのではないかと考えられています。
子宮内膜症患者の腹腔内には様々な免疫学的環境異常を伴うことが知られ、子宮内膜症にも生殖免疫学の研究領域があります。
ここまで、ワークショップの中から、東京大学医学部附属病院女性診療科産科の泉玄太郎先生の「腹腔内の樹状細胞の子宮内膜症への関与」を解説してきました。
「樹状細胞(じゅじょうさいぼう: Dendritic cells)」とは複数のサブタイプ(=サブセット)から構成される抗原提示細胞で免疫細胞の司令塔のような役割があります。
この樹状細胞(じゅじょうさいぼう: Dendritic cells)のサブセット(=サブタイプ)は、通常型DCsと形質細胞様DCsに大別されますが、更にこれは細分化され、病原細菌やウィルスに対する防御免疫を担うものもあります。
樹状細胞は環境要因によって機能が変わり、炎症状態では免疫系を活性化し、一方、定常状態では免疫寛容を誘導する細胞として機能します。
解説の前編は、ここまででした。
いよいよ、研究結果です。
まず、腹腔内に樹状細胞のどのサブセット(=サブタイプ)が多いかを明らかにして、子宮内膜症が発症する原因を調べてました。
その結果、子宮内膜症患者においては、DC2樹状細胞という、ヘルパーT細胞という免疫を担当する白血球の分化を誘導する作用があるタイプの樹状細胞が多いことが明らかになりました。
さらに、腹腔内での樹状細胞と逆流月経血の相互作用を解析するために、逆流月経血のモデルとして子宮内膜細胞を樹状細胞と一緒に培養してみました。
その結果、これらの樹状細胞(Dendritic cells 2:DC2)において、IL6やIL1βといった炎症作用を持つサイトカイン(=タンパク質)のmRNAの発現が亢進していました。
これらのことから、子宮内膜症患者の腹腔内の樹状細胞は、逆流月経血と相互作用することで、炎症作用を誘導し子宮内膜症を増悪させることが示唆されました。
皆さま、長い間お疲れさまでした。
冬は寒くなり、免疫力が低下します。
六本木や表参道のイルミネーションが美しい季節になりました。
イルミネーションを眺めていると、樹状細胞の形をイメージできます。
田町駅や三田駅からクリニックまでの第一京浜のイルミネーションを楽しみながら歩くと、クリニックまですぐです。