12月8日の水曜日は2004年からのお付き合いの東京慈恵会医科大学産婦人科OBの許山浩司先生に企画していただきまして、東京慈恵会医科大学産婦人科学講座の岡本愛光主任教授と3人でクリニックの近くのお寿司屋さんにてとても有意義な会食でした。
許山先生は、杉山産婦人科 丸の内の副院長を務められておりまして、いつも当院の不妊症の患者さんの日帰り手術や体外受精へステップアップした方の治療、また、逆に妊娠された方を分娩施設までの妊婦健診目的の紹介など当院と密接な医療連携を組んでいただいております。
許山副院長先生と岡本教授は慈恵会医科大学産婦人科学講座の同級生とのことで、今回、緊急事態宣言も解除されましたので、大変ありがたいことに貴重な会合を企画していただきました。
許山先生とは15年以上のお付き合いですので、少し気ごころが知れておりますが、岡本教授とは以前に東京大学の大須賀穣教授に学会で簡単に紹介していただいただけですので、粗相があってはいけません。
当日の水曜日は診療制限をし、午後の手術終了後から、慈恵会医科大学産婦人科学講座の最近のお仕事をコソ勉です。
HPから業績一覧をググりまして、気になった論文を斜め読みしてみました。
最初の論文は、井上桃子先生の「Autonomous trisomic rescue of Down syndrome cells 」という英語論文です。
著者の一覧を眺めると、どうやら国立成育医療研究センターでの仕事のようで、「羊水由来人工多能性幹細胞における21トリソミーレスキュー」という題名の学位論文(博士論文)でした。
まず、基本用語の解説です。
「人工多能性幹細胞」は、山中伸弥教授がノーベル賞をもらったiPS細胞のことで、正式名称は、induced pluripotent stem cellsとなります。
iPS細胞は分化した体細胞を初期化し分化前の状態に戻して作られますが、今回の研究では羊水中の細胞を初期化したようです。
「トリソミーレスキュー」とは、過剰な(=2本が正常の染色体の3本目の)染色体が分解もしくは細胞外に排出され、染色体数の異常がなくなった受精卵が生存可能になることです。
少し難しい用語なので、説明を続けます。
受精から間もない時期のヒト胚の細胞(=受精卵)では、染色体の数の異常が認められることがあります。
このような細胞を多く持つ受精卵(=胚)は通常着床しませんが、染色体数異常が自然に修復され着床することがあります。
染色体数異常の修復を異数性レスキューといい、3つあるものから修復される場合をトリソミーレスキューといい、1つしかないものから修復される場合をモノソミーレスキューといいます。
ちなみに、出生を可能にする異数性レスキューは受精後数日間の短期間に集中して起こります。
いつものように前置きが長くなってしまったので、研究成果は次回で解説します。
岡本主任教授、許山副院長先生との貴重なスリーショットはFacebookもご覧ください。