ついに新年度になってしまいましたが、昨年11月に米子で開催された第66回日本生殖医学会の報告の2回目です。
まだ、もう1つ不育症の講習会の参加報告が残っておりますが、明日は日本橋にて東京大学産婦人科学講座大須賀穣主任教授主催の講演会があり、ひょっとして久具先生とお会いするかもしれないので、急ぎ報告します。
教育講演の中で面白かったのは「生殖医療と社会の変容」で、演者は東京都立墨東病院の久具宏司先生でした。
久具先生には産婦人科学教室に入局以来大変お世話になっておりまして、大学院に進学する前にネズミの卵巣の実験手法を指導していただいたものです。
講演の内容は演題のタイトルから想像出来ますように、社会学的なものでしたがとても勉強になりました。
以下、講演のポイント解説です。
2020年の日本の出生児数はおよそ84万人で、2010年の107万人から10年間でおよそ20%減少しました。
ちなみに、いわゆる第1次ベビーブーム期では270万人で、その時期に生まれた女性による第2次ベビーブーム期では209万人でした。
合計特殊出生率は2005年に1.26と最低水準を記録し、2015年に1.45と持ち直したものの2020年は1.34となりました。
合計特殊出生率とはわかりやすく説明すると、「一人の女性が一生の間に生む子どもの数」のことを表しています。
このように、今後、出生児数は加速度的に減少し少子化か急激に進行していくことが予測されています。
この原因は、男女ともに進む晩婚化と非婚化、さらに結婚したあとも子をもうけるまでの期間が年々長期化していることだと考えられています。
ちなみに、日本女性の第1子出産年齢は、2010年から0.8歳上昇し、2020年は30.7歳でした。
このように、晩婚化による加齢に伴う卵巣機能の低下も一因となっている晩産化がますます進行していくことが予想されています。
これらの晩産化およびその結果としての少子化は先進国共通の課題です。
このような社会情勢の中「生殖医療」に寄せられる期待は大きく、日本でも今後卵子提供による妊娠が増加する可能性があります。
しかし、年齢が上昇した後に否応なく選択する卵子提供より、若年の女性を対象とした卵子凍結保存こそが晩産化社会における最善の解決策としてあらゆる方面から大きな期待が寄せられています。
妊娠して子どもをつくる女性個人についてみると、卵子凍結保存により希望どおりの人生設計への道が開かれることになります。
一方、社会全体から考えると晩産化を前提にした対応策を取ることが果たしてよいのか、もう一度深く考えてみることが必要です。