昨年の12月に東京慈恵会医科大学産婦人科学講座の岡本愛光主任教授と東京慈恵会医科大学産婦人科同窓の許山浩司先生との3人での会合で話題になった学位論文を紹介しています。
HPの業績一覧のトップにあった2019年度の英語論文は「Autonomous trisomic rescue of Down syndrome cells 」という題名で、学位論文は「羊水由来人工多能性幹細胞における21トリソミーレスキュー」という論文名です。
わかりやすく言うと、羊水由来の人工多能性幹細胞を用いた研究です。
ダウン症の染色体異常(21トリソミー)とこの表現型の一つである神経系の異常との因果関係を明らかすることを目的としています。
「トリソミーレスキュー」とは、過剰な(=2本が正常の染色体の3本目の)染色体が分解もしくは細胞外に排出されることにより染色体の数の異常が自然に修復し、(染色体数の異常がなくなった)受精卵が生存可能になることを言います。
さて、研究成果の解説です。
21番目の染色体が3本ある(=21トリソミーの)羊水由来人工多能性幹細胞の21トリソミーレスキュー(=21番目の染色体が3本ある細胞が2本になること)が起きるかどうかを、この細胞を長期培養して検討してみました。
研究の結果、21トリソミーを伴う誘導多能性幹細胞(iPSC)を70週間以上継続的に培養することにより、21番染色体が3本ある細胞から21番染色体が2本の正常な細胞に自然に置き換わる現象がみられました。
このトリソミーレスキューは、遺伝子操作や化学的な処理あるいは放射線への曝露を伴うことなく、非常に高い頻度で起きることが明らかになりました。
さらに、この置換した多能性幹細胞を用いて、神経系の細胞や皮膚を構成している細胞へと細胞を分化させることもできました。
このように。21トリソミー(21番染色体が3本)の細胞から長期培養により自然に置き換わった(21番染色が2本で染色体数が)正常な細胞を用いることにより、今後ダウン症の精神遅滞(=神経系の異常)の原因究明や治療に応用される可能性が示唆されました。
紹介が随分長くなりましたが、寿司ネタのタイがすこぶる美味しく幸せな夜でした。
おカメ寿司、また、伺いタイお店です。