無事、第27回アジア・オセアニア産婦人科連合(AOFOG)国際会議が終わりました。
プレゼンテーションの資料の提出が4月30日だったので、4月はこの仕事を日々の診療や新人スタッフ研修、年度替わりの事務手続きの合間に行っていましてかなり忙しかったですが、2題の演題発表を終えて達成感がありました。
開業を決心したときに、新しい知見を吸収するだけではなく、少しずつでいいので学会発表などアカデミックな仕事もできる専門性のあるクリニックを運営できればいいなあ。
と、考えていましたが、クリニックは目標に向かってゆっくりと進んでいます。
臨床研究の演題はネオセルフ抗体と不育症についての発表で、共同演者の東京大学産婦人科永松健准教授には大変お世話になりました。
症例報告の演題は先進的な出生前診断についての発表で、東京大学だけでなく、愛育病院百枝院長と山王病院藤井院長も共同演者となっています。
山王病院藤井院長には、東京大学から山王病院にご栄転直後にご挨拶に伺って以来、特別に最初のセミオープンシステム連携クリニックにしていただきまして、ありがたいかぎりです。
また、山王病院からは中山副院長産婦人科部長・国際医療福祉大学准教授にも金曜日の胎児ドックで大変お世話になっております。
なお、当院は4月から山王病院の生殖医療連携施設になっていますので、山王病院で体外受精をご希望される方は当院から速やかにご紹介ができますのでこちらも宜しくお願い致します。
先日、愛育病院百枝院長にはスタッフと一緒ご挨拶に伺いました。
大変有難いことに記念写真も一緒に取っていただきまして、こちらは宜しければFacebookもご覧ください。
もう一人の共同演者の東京大学産婦人科藤井達也先生にはクリニックを毎週月曜日に手伝ってもらっています。
発表のポスターを院内にも掲示してありますので、ご興味のある方はご覧ください。
さて、臨床研究の演題は、名古屋で開催されます日本不育症学会でも日本語で発表しますので、今回はその抄録をご紹介します。
こちらの方がわかりやすいかと思います。
[演題名]不育症患者におけるネオセルフ抗体の測定の意義について
[演者]松見泰宇(まつみレディースクリニック三田)、吉野純佳(まつみレディースクリニック三田)、永松健(東京大学産婦人科)
[目的]
不育症(RPL)は、抗リン脂質抗体症候群(APS)の臨床症状の1つです。
しかし、不育症患者の半数以上は明らかな原因が不明です。
最近、HLAクラスII分子(β2GPI/HLA–DR)と複合体を形成したβ2-糖タンパク質I(β2GPI)に対する自己抗体が、APSに関連する新規の自己抗体であることが報告された。
本研究は、不育症の女性における抗β2GPI/HLA-DR抗体と凝固関連バイオマーカーとの相関を検討することを目的とした。
[方法]
抗カルジオリピンIgG/IgM抗体、抗β2GPI抗体、ループス抗凝固因子などの従来の抗リン脂質抗体(aPL)の血清抗体価を、RPLおよび流産歴のある(RPL群)41人で測定した。
凝固状態を評価するために、TAT、AT3およびD-ダイマーの血清レベルを測定した。
[結果]
従来のaPL抗体は6/41で陽性で、抗β2GPI/ HLA–DR抗体は6/41で陽性であった。
従来の aPLおよび抗β2GPI/HLA-DR抗体とともに陽性であったのは1名であった。
RPL群の21/41でTAT濃度の上昇が認められた。
興味深いことに、TATの血清レベルは、抗β2GPI/HLA-DR抗体陽性の集団で共通して高く、凝固系がそれらの女性で活性化されていることが示唆された。
RPL群の中には1回目の妊娠は流産となったが、2回目の妊娠は抗β2GPI/HLA–DR抗体陽性がわかったため、LDAを投与し現在妊娠継続中である。
[結論]
RPL群では、抗β2GPI/HLA-DR抗体が凝固マーカーTATに反映される全身の凝固能亢進と関連している可能性が認められた。
また、抗β2GPI/HLA-DR抗体陽性の患者にLDAを投与したことにより、妊娠が継続しており、抗β2GPI/HLA-DR抗体の検索がRPLの診断ならびに治療に貢献する可能性がある。
今週末は名古屋で発表です。
コロナ禍が続く中で久しぶりの対面での学会になります。
現地で多くの先生方にお会いできるのを楽しみにしています。