令和3年度(令和3年1月から令和3年12月まで)の当院の不妊治療の統計です。
今月中にHPの診療案内に掲載されますが、先に解説させていただきます。
当院は平成30年12月3日に開院致しまして、3年半が経ちました。
4年目に入りまして、妊婦健診、不妊治療、不育症、着床障害に加えて、出生前診断にも診療領域を広げています。
出生前診断については、東京大学産婦人科医局出身の先生方(中山医師と藤井医師)に専門的な診療をお願いしています。
周産期領域に注力した専門性のあるクリニックを目指し、これらの患者さまのご予約が取りやすいように、一般婦人科の患者さまの予約枠は絞りながら、周産期領域の診療の予約枠を拡大しています。
7月から看護部スタッフも増えましたので、これからは、母乳外来など産後の診療も充実させていきたいと思います。
4年目になり、着床障害の診断に必須の子宮鏡検査に加えて、子宮内フローラ検査や不育症領域でもネオセルフ抗体検査をクリニックに導入し、その成果は少しずつ学会発表できるようになりました。
これからもオーダーメードを心がけ、丁寧に不妊ドックからタイミング療法、特に人工授精による不妊治療を実践してまいりたいと存じます。
まず、タイミング法についてですが、これまでの2年間と比べて、概ね、妊娠率に大きな相違はありません。
通院を1年間継続した場合、つまり脱落症例を除けば32パーセントの方が妊娠されています。
当然ですが、不妊治療専門施設は体外受精・胚移植の治療に焦点を当てているので、わたしが不妊治療専門施設で診療に携わっていたころに比べると、タイミング療法の治療成績の比較では格段に妊娠率は高いです。
タイミング指導で妊娠に至っていない方はどのような方かと分析しますと、
①不妊ドックなど不妊症の検査だけで通院された方か
②タイミング指導で(結果が出る前に)来院されなくなるか、あるいは、当院から他院へ紹介したか
③人工授精にステップアップされているか
④当院で令和4年7月1日以降に妊娠されているか、
のいずれかになります。
簡単に解説しますと、令和3年1月から令和3年12月までの1年間で当院に、不妊ドックなどの検査だけの方、言い換えると、一度でも【不妊初診】の予約枠で受診された患者さまはおよそ200人でした。
この不妊初診で来院された方(他院にご紹介した方、いらっしゃらなくなった方を含む)という母集団で割ると、(令和4年6月30日までに)おおよそ20パーセント、つまり5人に1人の患者さまがご妊娠されています。
繰り返しになりますが、統計の集計期間に通院を継続した場合、すなわち、脱落した症例を除けば32パーセントの方(3人に1人)が妊娠されています。
当院のタイミング指導で妊娠された方を母集団にして分析してみますと、初回のタイミング指導で約6割の患者さまが妊娠しています。
また、2回目までのタイミング指導で約9割、3回目までのタイミング指導でのタイミング指導で妊娠されたすべての患者さまが妊娠されています。
これらの結果から、当院がタイミング指導の治療に対して真剣に取り組んでいるのがお分かりになると思います。
タイミング指導にはクロミッド(クロミフェン)やフェマーラ(レトロゾール)およびゴナドトロピン製剤などの排卵誘発剤を用いた治療が含まれます。
いい状態の卵胞を1つだけ育てて排卵させるには、体外受精で採卵するために複採の卵(=卵胞)を発育させるのとは異なるコツがあります。
逆に、タイミング指導を4回、5回と繰り返しても、当院では妊娠に至らず、脱落して他院に転院されるか、妊娠していないということになりますので、当院にて治療を続けるならステップアップされて、人工授精に進まれるのがよろしいかと思います。
大変残念なことに、これまでに勤務していた不妊治療専門施設と比較しますと、患者さまの脱落が非常に早いです。
スタッフも含め、少人数で運営しているので、予約も取りにくいかと思いますが、半年から1年くらいは継続して通院していただけましたら、もっと結果を出せると考えています。
以上、前編では総括とタイミング指導についての統計をわかりやすく解説してみました。
後編では人工授精についての統計を解説します。