令和3年度(令和3年1月から令和3年12月まで)の当院の不妊治療の統計の解説の後編です。
わかりやすくお話しすると、令和3年度(令和3年1月から令和3年12月まで)に当院の【不妊初診】の予約枠で予約された方について令和4年6月30日の時点での妊娠したかどうかを検討しています。
他院にて結果の出なかった方が転院される傾向にありますが、これまでの2年間と比べて、概ね、妊娠率に大きな相違はありません。
通院を1年間継続した場合、つまり、他院にご紹介した方やいらっしゃらなくなった方を除けば32パーセントの方、つまり3人に1人が妊娠されています。
他院にご紹介した方やいらっしゃらなくなった方、つまり、脱落症例や、検査のみの方を含んだ母集団で割ってもおおよそ20パーセント、つまり5人に1人の患者さまがご妊娠されています。
前編では以上のような総括と合わせて、タイミング指導は3回くらいまでにして、4回、5回と漫然と続けるよりは、人工授精にステップアップされる方がいいということをお話しました。
さて、後編では、人工授精について解説します。
人工授精の統計については、人工授精で妊娠された数を人工授精を施行した回数で割った妊娠率は前年の約8パーセントとほぼ変わらない結果でした。
不妊治療の教科書には、母集団にもよりますが、人工授精の妊娠率はおおむね8から9パーセントと記載があるので、当院の妊娠率はほぼ不妊治療を専門的に実践している施設と同じレベルは維持していると言えます。
他の不妊治療専門施設(=他院)で人工授精をして結果が出なかった方や、他院にて複数回体外受精を試みられて、残念ながら結果が出なかったため、治療のステップダウンを目的に当院を通院される方は前年より増えております。
それにも関わらず、同じ妊娠率を維持しているのは、子宮内フローラ検査や子宮鏡による慢性子宮内膜炎の診断と治療など、着床障害について詳しく調べている結果だと思います。
人工授精で妊娠に至らない方はどういう方かを解説しますと
①当院にて、人工授精で(結果が出る前に)来院されなくなるか、
②当院で令和4年7月1日以降に妊娠されているか、
③当院から体外受精目的に他院にご紹介しているか、
のいずれかになります。
大変残念なことに、これまでに勤務していた不妊治療専門施設と比較しますと、患者さまの脱落が非常に早いです。
6回くらいは継続して人工授精のチャンスがいただけましたら、もっと結果を出せると考えています。
なお、脱落症例を除くと、人工授精による治療をされた患者さまの2割の方が妊娠されています。
こちらも同様に、人工授精で妊娠に至った方の約40パーセントが1回目で妊娠されています。
また、2回目までで70パーセント、4回目までで全員の方が妊娠に至っています。
6月30日の時点では、5回以上人工授精をされて妊娠された方はいませんでした。
逆に、5回目以上人工授精をされて妊娠された方はいません。
大変残念なことに、これまでに勤務していた不妊治療専門施設と比較しますと、予約が取りにくいこともありますが患者さまの脱落が早いです。
6回くらいは継続して通院していただけましたら、もっと結果を出せると考えています。
不妊治療も保険適応になりました。
体外受精には制限がありますが、人工授精には年齢や回数の制限はありません。
今後もより一層、着床障害の診断および治療に注力しまして、「人工授精で妊娠できるクリニック」を目標にしたいものです。
なお、本年4月より当院はセミオープンシステムの構築に続き、山王病院の生殖医療連携施設に認定されましたので、患者さまのご紹介もこれまで以上にスムーズかつダイレクトに行えるかと思います。
一般不妊治療しかしていないクリニックでHPに治療成績をあげているところは少ないと思います。
今年度から不妊症に加えて、不育症の患者さまも増えてきました。
不育症については、治療成績に先立ち学会発表をすでにHPの診療案内のところに掲載していますので、そちらも参考にしてください。
不育症については、東京大学不育症診療チームと密に連携を構築している関係で共著の発表が多いです。
漫然と外来診療の数をこなすのではなく、治療成績を少しでもあげるように、スタッフ一同、精一杯努力してまいりたいと思います。
これからもまつみレディースクリニック三田を宜しくお願いします。