7月も今日で終わり、明日から8月です。
6月に開催されました第22回日本抗加齢医学会総会の参加報告の後編です。
後編では「加齢に伴う妊孕性及び妊娠への影響」という演題をご紹介します。
東京大学産婦人科学教室の熊澤惠一講師が演者でした。
妊孕性つまり妊娠する能力は加齢とともに、そして男女ともに低下します。
女性の妊孕性の低下の原因としては、卵や胚の質の低下が有名ですが、それ以外にも、子宮筋腫、卵管炎および子宮内膜症などの婦人科疾患にかかる割合が加齢とともに増えることも要因になります。
卵管炎により卵管障害が起きたり、あるいは、子宮内膜症や子宮筋腫により腹腔内環境の悪化や子宮内腔の変形などが生じます。
また、妊娠を取り巻く状況を考えると、妊娠年齢が上昇すると合併症妊婦の管理も難しくなります。
合併症としては、糖尿病合併妊娠や腎疾患合併妊娠あるいは抗リン脂質抗体症候群などが増えることが知られています。
日本では、35歳以上の妊娠を高齢妊娠と定義しますが、第一子出産平均年齢は昭和50年:25.7歳、平成2年:27歳、令和元年:30.7歳と徐々に上がってきています。
45歳以上の妊娠は超高齢妊娠と言われ、高齢妊婦は健康上以外にも、社会的問題を抱えることになります。
わかりやすく説明すると、染色体異常増加のリスクに加えて、健康上の問題で育児困難となるリスク、ひどくなると子どもの成人前に夫婦が要介護になったり、死亡するリスクも生じます。
健康上の問題に先立ち、経済的なリスクも発生します。
一般的に、高齢妊娠では妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の割合が増えますが、前置胎盤や子宮内胎児死亡あるいは低出生体重児の発症リスクも上昇し、帝王切開率が増加します。
このような高齢で増加する妊娠合併症のメカニズムを解明するため、高齢妊娠モデル動物を作成しました。
高齢妊娠モデルマウスでは、①妊娠前の母獣重量が増えているが、②子宮内胎児数は減っていたり、③妊娠中の血圧が上がっていることがわかりました。
さらに、妊娠高血圧症候群と言われるこの妊娠中の血圧上昇を解析すると、高齢モデルマウスでは、④血圧を調節しているタンパク質(sFlt-1)の血中濃度が異常値に(=高く)ならないにもかかわらず、血圧が上昇していることなどが明らかとなりました。