5回シリーズの第40回日本受精着床学会参加報告、第2回は妊娠に向けた子宮内環境の改善というシンポジウムで発表された演題をご紹介します。
このシンポジウムは、4つの演題で構成されていましたが、そのうちの2つ、「妊娠における至適な子宮内細菌叢の検討」と「PRP子宮内投与による着床環境の改善」をポイント解説したいと思います。
1つ目は子宮内細菌叢(=子宮内フローラ)の話です。
子宮内細菌叢については何度も取り上げているので、興味のある方は過去ブログも参照してください。
ラクトバシラス属は、糖を乳酸に代謝する乳酸菌群の大部分を占めていて、菌を構成する遺伝子の数は1100個から3200個まで幅があり、各々にクリスパタス種、ガセリ種あるいはイナーズ種というように種名が付きます。
種が異なると、菌の産生するものが乳酸だけのものと乳酸とアルコールの2種類であるものなど、菌の性質も異なります。
ラクトバチルス属のクリスパタス種(ラクトバチルス・クリスパタス菌)やガセリ種(ラクトバチルス・ガセリ菌)と比べて、イナーズ種(ラクトバチルス・イナーズ)は遺伝子の数が少ない(およそ1100個)種です。
この種は、子宮内膜の脱落膜化が起きていない慢性子宮内膜炎の集団に多く認められます。
また、細菌性膣炎などの起炎菌(となるウレアプラズマ)とともに存在することが多くみられます。
逆に、ラクトバチルス属のクリスパタス種(ラクトバチルス・クリスパタス菌)やガセリ種は子宮内細菌叢(=子宮内フローラ)での感染防御作用が強いです。
子宮内環境の話をまとめますと、子宮内フローラ検査では、乳酸菌に代表されるラクトバチルス(ラクトバシラス)という菌の属だけではなく、種レベルでの細かい分類と評価が必要ではないかということでした。
2つ目はPRP療法(多血小板血漿治療)の話です。
ブログの検索機能で「PRP療法」でヒットする過去ブログでも触れていますのでそちらも参照して下さい。
演者の山王病院久須美真紀先生は子宮鏡による子宮内膜ポリープ切除術のセミナーも担当されていました。
PRP療法は第2種再生医療として認定されていますが、PRPの投与により、7㎜以下の子宮内膜が菲薄化した症例では、子宮内膜細胞が増殖し、内膜厚が増えることが多く認められます。
PRP療法により慢性子宮内膜炎や子宮内フローラの改善がみられることもあります。
PRP療法は歯科・口腔外科領域のインプラントや関節炎などの整形外科領域でも用いられていますが、ネズミを使った基礎研究の報告も散見されます。
先日、子宮内細菌叢(=子宮内フローラ)検査が先進医療に認められました。
先進医療については過去ブログも参照してください。
当院は一般不妊治療しか行っていないクリニックですが、厚生労働省より正式に子宮内細菌叢検査を先進医療として行える施設に認定されました。
8月から、保険周期でも先進医療(自費)の子宮内細菌叢(=子宮内フローラ)検査を当院でも行うことが可能になりました。
なお、新たに子宮内フローラと不育症についての臨床研究も開始しました。
子宮内フローラ検査と不育症の臨床研究について詳細を知りたい方は、スタッフにお問い合わせください。