第1回アジア生殖免疫学会の学会報告の3回目です。
今回から第1回アジア生殖免疫学会で発表した内容を、わかりやすく小分けにして解説していきたいと思います。
なお、先日東京で発表した、ネオセルフ抗体と血液凝固状態についての内容は日本産科婦人科学会の雑誌に採用され、「印刷中」の状態です。
今回の発表内容は英語論文として欧米紙に投稿済みで、厳正な審査のもと少し手直しすれば採用されるということでした。
提出した英文論文のRevised versionは近日中に再投稿予定です。
2つの論文はいずれもネオセルフ抗体という新規の抗リン脂質抗体の有用性についての「世界初」の論文になります。
それでは、第1回アジア生殖免疫学会の抄録を少しずつ日本語訳していきます。
Evidence for Correlation between Novel Autoantibody against Phospholipid Named Neoself Antibody (β2GPI/HLA-DR) and Complement Consumption in Infertile Patients
論文タイトル:不妊症患者におけるリン脂質に対する新規自己抗体である「ネオセルフ抗体(β2GPIとHLAクラスII分子との複合体)」と補体の消費量との相関関係についてのエビデンス(=証拠)
Purpose: Complement consumption is progressing in patients with IVF, and anticardiolipin and anti-β2-glycoprotein I (β2GPI) antibodies are associated with adverse IVF outcomes because antiphospholipid antibodies (aPL) are associated with impaired implantation.
目的:体外受精をしている患者では補体の消費が進んでいることが知られている。
抗リン脂質抗体(aPL)が着床不全と関連している。
抗カルジオリピン抗体や抗β2-糖タンパク質I(β2GPI)抗体などの、抗リン脂質抗体(aPL)が認められる患者では、体外受精でうまくいかないことが多い。
Recently, autoantibodies against β2GPI in complex with HLA class II molecules (β2GPI/HLA-DR) named neoself antibodies have been reported to be associated with infertility.
近年、β2GPIとHLAクラスII分子との複合体(β2GPI/HLA-DR)に対する自己抗体「ネオセルフ抗体」が不妊症と関連することが報告されている。
The present study investigated the relationship between neoself antibodies and complement consumption in infertile patients with impaired implantation.
本研究では、着床不全のある不妊症患者を対象に、ネオセルフ抗体と補体の消費量の関係を検討した。
Methods: Serum antibody titers of neo-self antibodies were measured in 102 women without other factors, such as tubal and severe male factors.
方法: 卵管因子や重度の男性因子などの他の不妊原因を持たない女性102名を対象に、ネオセルフ抗体の血清抗体価を測定した。
長くなってきましたので、このあたりで、「補体」という単語を説明してみます。
補体:(ほたい、英: complement)とは、生体がウィルスなどの病原体を排除するときに抗体の作用を補助するという意味で命名された免疫システムの構成成分となるタンパク質のこと。
補体と呼ばれるタンパク群には複数のタンパクがあり、英語で補体を表す “complement” の頭文字をとってC1からC9で表される。
新型コロナウィルスにかからない(あるいは重症化しない)ためには、コロナのワクチンを接種して抗体ができるようにしましたね。
この抗体がウィルスを攻撃するときには、「補体」がその作用を助けてくれるのです。
続きは、第1回アジア生殖免疫学会(4)で報告します。