第1回アジア生殖免疫学会の学会報告の4回目です。
前回の解説からの続きです。
第1回アジア生殖免疫学会(3)では、臨床研究のデザインと「補体」について解説しました。
それでは、臨床研究のデザインから引き続きまた解説します。
We measured serum levels of complement component 3 (C3), complement component 4 (C4), and total hemolytic complement (CH50).
In addition, serum C-reactive protein (CRP) was also measured to evaluate inflammation status.
Correlations between neoself antibodies and C3, C4, CH50, and CRP were analyzed.
補体成分であるC3とC4およびCH50の血清濃度を測定した。
また、炎症状態を評価するために、血清中のCRP濃度を測定した。
C3、C4、CH50、CRPの4つの項目において、ネオセルフ抗体との相関を分析した。
ここまでが研究のデザインで、ここからが結果になります。
Results: Among the 102 patients, one had a CRP of 2.26 mg/dl, and three had antibody titers of 200 U/ml or higher.
Thus, 98 patients were enrolled in this study.
Twelve (11.8%) women were positive for neo-self-antibodies (cutoff: 73.3 U/ ml).
結果:102名のうち、1名はCRPが2.26mg/dl、3名は200U/ml以上の抗体価であった。
本研究に登録したのはこれらを除いた98名の患者で、12名(11.8%)の女性がネオセルフ抗体陽性(カットオフ:73.3U/ml)であった。
The serum levels of C3 and C4 were significantly decreased with higher titers of neoself antibodies in these recruited patients (P=0.044 and P=0.015).
There was no significant difference between CH50 and neoself antibodies.
この患者集団において、血清中のC3およびC4レベルは、ネオセルフ抗体の力価が高いほど有意に低下した(P=0.044およびP=0.015)。
CH50とネオセルフ抗体の間には、有意な差はなかった。
このあとで、結論になりますが、もう少し、結果を補足して解説します。
102名の集団からCRPが2.26mg/dlの方を1名除きました。
CRPというのは炎症があると増える血液中のタンパク質です。
CRPとはC-reactive proteinの略で、C反応性タンパクともいわれます。
このタンパクは、体の中で炎症や組織の破壊がおきているときに血液中に現れます。
つまり、血液中のCRPの値が高い場合には「体のどこかに炎症がある」ということになります。
炎症は、感冒による急性上気道炎のような、急性の炎症と、慢性的な炎症である「慢性炎症」に分けられます。
一般的に慢性炎症性疾患では、CRP値は0.3~2.0mg/dlと急性炎症性疾患に比べて、CRPは比較的低値になります。
なお、102名の母集団から、上記の1名と200U/ml以上の抗体価である3名を除いて解析しています。
長くなるので、この続きは最終回の第1回アジア生殖免疫学会(5)でお話します。