9月なりましたが、まだまだムシムシした日々が続きます。
当院で世界に先駆けて行っていたネオセルフ抗体の研究成果について、シリーズで報告しています。
福岡の日本産科婦人科学会で英語での発表と並行して、日本不育症学会でもネオセルフ抗体と血液凝固状態を示すバイオマーカー(TAT)との相関についての発表をしました。
名古屋市立大学は不育症の研究と臨床のメッカで、その年度の日本不育症学会は名古屋での開催でした。
名古屋市立大学杉浦真弓教授にも大変お世話になっていますが、学会の帰りに同窓の青木耕司先生と一緒に食べたひつまぶしが美味しかったのを覚えています。
血管から外に出た血液は、時間の経過とともに、固まり始めます。
学会で発表したところ、凝固状態を示すTATとの相関は、採血手技によるただのバイアスではないかとの質問を受けたため、研究は炎症にかかわる補体というタンパク質との相関を解析するように変更していきました。
「補体を測定してみたらいかがですか?」
とアドバイスをしてくれたのは、ネオセルフ抗体の研究をはじめるきっかけを与えてくれた永松健先生でした。
永松健先生は高校の後輩でもあり、鉄門テニス部OB戦でのダブルスの親善試合でも、よくペアを組んで出たものです。
前置きが長くなりましたが、発表論文の続きは【成績】からです。
ネオセルフ抗体検査の有効性について
〇松見泰宇1、藤井達也1、百枝幹雄2
まつみレディースクリニック三田1、母子愛育会総合母子保健センター愛育病院2
【成績】
流産、化学流産既往のある女性102名を流産回数で層別化すると、流産回数が0回は40%、1回は16%、反復流産・不育症の診断となる2回以上は44%で、5回流産している患者も認められた。
この母集団において血清ネオセルフ抗体価はおおむね200U/ml以下で、それを超える3例のうち最高のものの抗体価は1279.1U/mlであった。
母集団における外れ値の上限は86.3 U/mlであった。
同102名中、血漿中TAT濃度未測定を除いた群は92名であった。
CRPが2.26mg/dlと高値を示す急性炎症状態であると考えられる症例及びネオセルフ抗体価が86.3 U/ml以上で外れ値とみなされる症例を除いた群は73名であった。
ここから流産回数0回の患者(N=28)を除いた45名について、血清中ネオセルフ抗体価と血漿中TAT濃度の相関関係を解析した。
この集団において、β2GPIネオセルフ抗体価はTAT濃度の上昇と有意な相関を認めた(相関係数:0.296、P=0.0483)。
【結論】からは第4回に続きますが、血液凝固に関する凝固因子などの未発表データーは豊富にあり、それらのデーターを合わせた解析もできるので、時間があれば凝固の方も掘り下げて発表したいものです。