年頭の抱負の前に、書き溜めていた下記ブログからお届けいたします。
本日は、イントラリピッド療法を当院で受けている患者様の診療と年度末にできなかったクリニックの掃除などを院長一人で行いました。
レセプト送信も無事に終わり、今後のクリニックの運営についてミーティング。
年末は東北地方の医療支援、年始は千葉県でも支援をを行うことができ、これらの経験によりまた一歩成長できました。
さて、シリーズでお伝えしている第39回日本生殖免疫学会の演題のポイント解説を続けます。
これまでは一般演題の中から、面白そうなものを選んで発表してきました。
第5回からは、シンポジウムの解説に移りたいと思います。
シンポジウム1は、着床不全の新規治療戦略についてで、シンポジウム2は基礎医学についてでした。
基礎医学は好きですが、ブログの読者の皆さまには少し難しいとおもわれますので、今回は着床不全の新規治療戦略についてのシンポジウム1を簡単に解説します。
シンポジウム1の内容はNK細胞測定、Th1/Th2を中心とした免疫異常とその治療、抗凝固療法以外のヘパリンを用いた治療になります。
この中から、抗凝固療法以外のヘパリンを用いた治療について紹介します。
演題タイトル:ヘパリンの抗炎症作用を通じた流産予防効果の検証 ―ヒトおよびマウスモデルでの解析―
この発表は日本医科大学の女性診療科・産科、市川智子先生と微生物・免疫学教室の根岸靖幸先生を中心とした共同研究結果になります。
背景:不育症の原因の一つである抗リン脂質抗体症候群(APS)に対して、ヘパリン療法が標準治療とされています。
従来はヘパリンの抗凝固作用が主な治療効果と考えられていましたが、最近の研究で抗炎症作用も持つことが明らかになりました。
研究の目的:ヘパリンの抗炎症作用が流産予防にどのように寄与するかを調査するために、人間とマウスの両方を対象に研究を行いました。
研究の方法は以下の通りです。
臨床研究: 不育症患者をヘパリン群とアスピリン群に分け、抗炎症マーカーであるグラニュライシン(GNLY)を測定しました。
マウスモデル: 妊娠マウスに炎症を誘発するリポポリサッカライド(LPS)を投与し、ヘパリンの効果を調べました。
以下のような研究結果でした。
臨床研究: ヘパリン投与により血清GNLYが有意に低下し、生児獲得率が向上しました。
マウスモデル: ヘパリンはLPS誘発流産を有意に減少させ、抗炎症作用を示しました。
これらの研究結果から、ヘパリン療法は抗凝固作用に加え、抗炎症作用でも流産予防に役立つ可能性があります。
根岸先生とは韓国でもご一緒しまして、市川先生ともお久しぶりのご挨拶が出来まして、とてもためになるシンポジウムでした。